・暗黒光子と呼ばれる仮想の粒子を見つけるために、いくつかの研究が進められています。
・今のところ、物理学者たちは何も発見できていません。
・しかし、今後行われる実験では、暗黒光子の崩壊をより正確に、より高感度に観測することができるようになります。
暗黒物質をご存じでしょうか。光を発せず、観測可能な電磁波と相互作用しないため、電磁波の全領域から見えません。暗黒物質は、我々の銀河系に単独で存在する唯一の仮想的な粒子ではないかもしれません。それは、未知の力のほんの一部を表しているのかもしれません。
この可能性から、ダークフォトンという別の仮説の粒子が考えられています。これは典型的な光子によく似ていますが、暗黒物質の粒子間でのみ交換されるものです。ダークフォトンには質量があるとするモデルもあります。
もちろん、ダークフォトンを証明することができれば、これまでの理論が書き換えられる事になります。ほとんどの理論が推定しているよりもはるかに複雑な暗黒物質について、貴重な事実を明らかにすることができます。
しかし、世界最大の粒子加速器である大型ハドロン衝突型加速器(Large Hadron Collider LHC)の最新の研究成果では、何も明らかにされませんでした。研究は空振りに終わりましたが、電磁場とダークフォトンの相互作用の強さについて、考えられる値の幅が狭まったのです。
ダークフォトン
芸術作品:Sandbox Studio, Chicago with Ana Kova
ダークフォトンという概念は、暗黒物質に作用する新たな広域ダーク電磁気・ゲージ場の媒介粒子として、2008年に提唱されたものです。典型的な光子と混合して、既知の粒子の相互作用に影響を与えることで、理論的に検出することが可能になります。
ダークフォトンがg-2異常の原因であると考える科学者もいます。しかし、その後、相対論的重イオン衝突型加速器でのさまざまな研究や実験によって、暗黒光子は異常の原因ではないとされました。現在フェルミ研究所では、以前の研究よりも4倍も正確な結果を出すとされる新しいミューオンg-2実験に取り組んでいます。
LHC実験
これまで述べてきたように、陽子衝突は、さらにミューオンや反ミューオンに崩壊する暗黒光子の生成方法の1つである可能性があります。大型ハドロン衝突型美検出器を運用している研究チームは陽子-陽子衝突のデータ(2016年取得)で、過剰なミューオンとアンチミューオンの手がかりを見つけられませんでした。
しかし、データフォトン崩壊の電磁気的結合の制約を狭めることに成功しました。長寿命光子の崩壊は214から250MeV/c2であり、一方、速やかに崩壊する暗黒光子は10.6から70MeV/c2です。
この成果は、2017年に実施された低質量領域におけるダークフォトンの崩壊生成物の解明に焦点を当てた実験にとって良い前兆となりました。研究者たちは、今後の研究や実験が暗黒光子の崩壊に対してより正確で高感度なものになると予測しています。2021年までには、実験の精度が少なくとも現在の数百倍になっている可能性があります。
MITによるDarkLight実験
DarkLight |提供: Bateslab MIT
また、マサチューセッツ工科大学の研究者たちは、約10〜500MeV/c2のエネルギー範囲の暗黒光子を探しています。DarkLightと名付けられたこの実験では、窓のない水素ガスターゲットのプロセスを分析することで、ダークゲージ場を見つけることにも焦点をあてています。
今のところ、何も見つかっていません。しかし、もしこの粒子が発見されれば、電磁気力、重力、弱い力、強い核力に関連する粒子に加えて、自然界の5番目の基本的な力になります。