・複数の負荷を下流からスキャンする非侵入型モニタリングシステムが開発された。
・グラフィカルなプラットフォームと機械知能を利用して、電気機械システムをリアルタイムに診断することができる。
・中規模の工場や船舶で使用される比較的小さな電気システムに適している。
産業用地、ビル、軍事施設などのエネルギー効率の向上は、関連するプロセスに関する情報と洞察から始まります。負荷の挙動や稼働パターンをデータ化することで、無駄を発見し、効果的な需要重視のエネルギー管理を実現します。
欠陥のある基幹機器は、最終的に故障するまで長期間にわたって稼働します。これは、たとえ電気システムに故障の兆候が数週間前に現れていたとしても、ほとんどの場合において発生します。そのため、個々の負荷の電気システムを監視することで、状態に応じた予知や診断も可能になります。
最近、マサチューセッツ工科大学の技術者たちは、あらゆる種類の電気機器のパターンをスキャンし、どの機器が故障間近の症状を示しているかを判断できる新しいシステムを開発しました。電力系統における機器の誤動作や故障の影響を最小限に抑えることができるものです。
微小な変動を検知する
このシステムは、新しいセンサーと非侵入型モニタリングシステム(non-intrusive load monitoring:NILM)ダッシュボードと呼ばれるグラフィックディスプレイを含んでいます。センサーは、従来の電線の外側の特定の場所に接続されます。
その場所から、隣接する電線の電流フローを検出し、機器のスイッチを入れるたびの電流や電圧の小さな変動を調べることで、回路内のポンプやモーター、電気機器などの異常な兆候を特定することができます。
また、エネルギー使用量を記録し、いつどこで機器が使用されているか、またはアイドリング状態であるかを示すことができます。この技術は、エンジニアが施設をよりエネルギー効率の高いものにするのに役立つ可能性があります。中規模の工場や船舶で主に使用される、比較的小さな電気システムに適しています。
この三本立てのシステムは、少し訓練すれば簡単に使用することができます。NILMは、モニターしているすべての機器のダイヤルを表示します。正常な状態ではダイヤルの針は緑色のゾーンに留まっていますが、問題を発見するとすぐに針は赤色または黄色のゾーンに振れます(問題の性質による)。
テストと応用
エンジニアはすでに米国沿岸警備隊のカッター【小型船】でこのシステムをテストしています。2つのセンサーを使用して、USCGCスペンサー号の20の異なるモーターと機器を監視しました。これらのセンサーは、船内で深刻な火災を引き起こす可能性のある、配線が焼けて故障したモーターを特定することができました。
ディーゼルエンジンの水を加熱するコイル(左)と検査で腐食が確認されたコイル(右)
出典:研究者
研究チームは、このシステムを正確にテストするため、沿岸警備隊のカッターの様々な部分に、有線式と非接触式のセンサーを設置しました。今回検出されたのは有線式のセンサーですが、非接触式のセンサーを不具合のある部分に取り付けても同じ結果になったはずだとエンジニアは確信しています。
全体として、このシステムは活動の監視、状態基準の追跡、エネルギー使用量の記録に使用することができます。海軍や沿岸警備隊だけでなく、危険物や可燃物のリアルタイム監視を必要とする化学メーカーにも有用でしょう。
すべての解析と計算をローカルで行うことができるため(インターネット接続は一切不要)、システムを電子的・物理的に分離することができます。このため、外部での改ざんやデータ盗難の可能性を大幅に減らすことができ、産業・軍事用途としてより魅力的なシステムとなっています。