紙を意味する英語のPaperという単語は、ラテン語のパビルス(papyrus)に由来します。パビルスは、Cyperus papyrus(カミガヤツリ)という名前の水生顕花植物の髄からできる材料です。古代エジプト文明では、紙の発明前は、筆記にはパピルス(天然植物繊維を絡み合わせ膠着させたもの)が使われていました。
製紙法は西暦25年から220年までさかのぼります。中国の発明家蔡倫が現代の製紙法を発明し、8世紀にイスラム世界に広まり、その後、300年以内にヨーロッパに伝わりました。
スペインでは、製紙法は水車による製紙工場の利用により改良されました。その後、 19世紀の改良により、世界規模で製紙業界に革命がもたらされました。この時期、セルロース繊維を、機械的または化学的に木材から分離し紙を作ることができるという発見がありました。
現在では、ほとんどすべての紙は大規模な機械で製造されています。製紙機械の中には、毎分長さ2000m、幅10mのリールを生産可能で、年間最大60万トン生産能力を持つものもあります。
統計調査プラットフォームStatistaの調査によると、2017年には世界中で約4億1970万メートルトンの紙とボール紙が生産されました。その内、33%は方眼紙、50%超が包装紙の生産によるものでした。米国、中国、および日本が世界の紙生産の半分以上を占めています。
本記事では、包装、印刷、クリーニング、装飾、およびさまざまな建設と工業工程に使用される紙についてまとめて説明しています。
17. レイドペーパー
アンティーク レイドペーパー 画像提供:Wikimedia
用途:高級文房具、木炭画
18世紀半ば以前は、紙は金網の付いた枠を使用して手作業で作られていました。粗い金網により、紙にはレイド模様(縦と横の線)が入ります。
伝統的なレイド模様は、広い間隔で並ぶ一連の線(チェインライン)とチエインラインに90度で交差する狭い間隔で並ぶレイド線 (簾の目)からなります。レイドペーパーは、12世紀から18世紀の間に生産された紙の種類の中で主要なものでした。現在でも、芸術家が木炭画用と使用しています。
16. 網目紙
用途:クロマトグラフィー、出版
網目紙は、特定のパターンが表れないような方法で、真ちゅうやその他のワイヤーを織り合わせることによって作られます。紙の表面は均一で、透かしや筋はありません。網目紙の製紙技術は、ジェームズ・ワットマンによって発明され、イギリス、フランス、アメリカの製紙工場に急速に広まりました。
高品質の網目紙は発明者にちなんで、ワットマン紙と呼ばれています。網目紙はきめが細かく、固く強い紙質で、レイド線はありません。
15. 画仙紙
用途:書画、筆記用、巻物の作成
画仙紙は古代中国で生まれました。現在まで残る古代中国の有名作家の書物や書画のほとんどは、画仙紙で保存されています。
きめが細かく柔らかいため、絵の表現だけでなく、書道にも適しています。画仙紙は表面が滑らかで、引張強度に優れています。しわや腐食に対する耐性が高いのも特徴です。
14. バナナペーパー
用途: 芸術と紙のプロジェクト、船の牽引ロープ、耐水掘削ケーブル
バナナペーパーは環境に配慮した紙です。バナナの木は年に一度実をつけ、その後伐採されます。そのため、木の幹や葉は廃棄物として残ります。バナナ繊維を紙としてリサイクルすることで、森林や河川の汚染をある程度防ぐことができます。
バナナペーパーには、主に2つの用途があります。
・バナナの樹皮から作られた紙は、主に芸術のために使用されます。
・バナナの果実や茎の廃棄する部分を利用した繊維から紙を作ります。紙は手作業または工業機械で作られます。
パナナペーパーは、さまざまなサイズと色で販売されています。すべて、天然のバナナ植物繊維を含み、酸を含まず、坪量は40g/m2です。バナナ繊維は、綿繊維や他の合成繊維と簡単に混合して、生地や織物として加工することができます。
13.トレーシングペーパー
用途:画像または図面のトレース
トレーシングペーパーは、主に建築家やエンジニアが図面を作成するためのものです。不透明度が非常に低いため、画像に重ねると、トレーシングペーパー越しに画像を簡単に透かして見ることができます。これにより、画像内のエッジを見つけて、画像全体をトレーシングペーパーに簡単にトレースできます。
トレーシングペーパーはセルロースと綿繊維からできています。多くの場合、不透明度と印刷品質を改善するために、他の充填材料が含まれています。純粋なセルロース繊維は半透明ですが、繊維の間に空気が閉じ込められているため、白く不透明に見えます。
トレーシングペーパーを半透明に見せるために、空気がほとんど無くなるまで繊維を叩いて精製します。非常に高密度で、湿度50%で最大10%の水分を含むことができます。
12. バンクペーパー
用途:タイプ印刷、通信文
バンクペーパーは、坪量50g/m2 未満の丈夫で薄い筆記用紙です。英語のBank Paperは、銀行が発行する証券に使用されることが多く、紙幣、手形、コマーシャルペーパー、および支払手形はすべてBank Paperです。
11. ボンド紙
カラーボンド紙
用途:国債などの証券、グラフィック作品
ボンド紙は繊維パルプでできた粗い質感の丈夫な紙です。高品質の筆記用紙で、坪量(重さ)は 50g/m2を超えます。最も一般的なボンド紙の坪量は90g/m2、75g/m2、および60g/m2となります。
ボンド紙は、もともと国債などの印刷用紙としてデザインされましたが、現在は、電子プリンター、文房具、グラフィック作品に使用されています。
10.巻紙(まきし)
さまざまなブランドの巻紙
用途:紙巻きたばこ
巻紙は、たばこ葉やその他の吸引用の植物の葉を巻く専用の薄い紙です。巻紙は、エスパルト、サイザル麻、亜麻、麻などの軽量の非木材植物繊維から作られています。
巻紙は、さまざまなサイズの長方形のシートやロールの形で販売されており、一方の長片に沿って、接着剤が塗布されています。着色されたものや、透明なもの、風味付けされたものもあります。燃えさしが通気できるように、多孔度が異なります。また、たばこの燃焼速度を調整し、たばこの灰を安定させる物質を含んでいます。
9. ティッシュペーパー
用途:テーブルナプキン、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ペーパータオル
ティッシュペーパーは、再生紙のパルプから作られた軽量の紙です。主要な特性は、厚さ、坪量、吸収性、伸縮性、快適さ、および外観です。
ティッシュペーパーは針葉樹と広葉樹の紙パルプ、水、化学薬品から作られています。濡れた物、乾いた物の表面の洗浄に適し、便利なため、主に衛生目的で使用されます。
北米では、ティッシュの消費量がヨーロッパのほぼ3倍です。米国では、ティッシュおよび衛生紙市場の2020年の収益は354.44憶ドルに達しており、今後3年間で年間1.8%の成長が見込まれています。
8. リトマス紙
用途:酸塩基指示薬
リトマス紙は、地衣類から抽出されたさまざまな染料から作られており、リトマス紙を浸す溶液のpHによって特定の色に変色します。この用途に合わせて吸収性が高くなっています。
溶液のアルカリ度または酸性度は、pH値として表される水素イオンの濃度によって決まります。リトマス紙を使用すると、すぐ結果がわかりますが、溶液のアルカリ度と酸性度を判定することはできません。
7. コットンペーパー
用途:重要文書、プリント回路基板
コットンペーパーは、名称が示すように、主に使用済みの布の綿繊維で作られています。木材パルプ紙と比較して、コットンペーパーは強度が高く、耐久性があります。トナーやインクの吸収に比較的優れており、高い酸性度をもちます。
高品質のコットンペーパーは、著しい変色や退色をせずに、何世紀にも渡って使用できます。このため、通常、重要な文書や論文の保存用複製に使用されます。一般的に、法的文書の紙には25%の綿が含まれています。また、フェノール樹脂を含浸させたものが、プリント回路の基板として広く使用されています。
6.ワックスペーパー
用途:食品保存用の包装、写真撮影の光拡散材
19世紀を通じて、ワックスペーパーは、精製した蜜蝋(蜜蜂の巣を原料とする蝋)を紙に含浸または塗布して製造されていました。 1870年代、ドイツ生まれのアメリカ人化学者 Herman Frasch は、パラフィンワックスを精製して紙に塗布する効率的な方法を開発しました。その方法は、 その後10年以内に、ワックスによる紙の製法において、蜜蝋に取って代わりました。
Fraschの開発した方法は、現在でも防湿紙の製造に使用されていますが、パラフィンから作られたワックスペーパーはリサイクルできないため、いくつか環境問題が伴います。
5. パーチメント紙
用途:焼き菓子等の焦げ付き防止
パーチメント紙は、紙パルプのシートを硫酸または塩化亜鉛に浸して製造する焦げ付き防止用の紙です。紙はゼラチン化され、耐熱性と安定性が高く、表面エネルギーの低い硫化架橋材料が形成されます。パーチメント紙は、焙煎またはベーキング時の高温耐熱性があります。
パーチメント紙は、強酸を使用して製造されるため、公文書の保管には使用できません。
4. 壁紙
用途:室内装飾、壁の小さな傷や、凸凹の補修
壁紙は、17世紀以来、家庭および公共の建物の内壁の装飾用品として使用されてきました。初期の壁紙は風景を特徴としており、主にフランスとイギリスで製造されていました。20世紀初頭までに、柄の壁紙が人気を博すようになりました。
現在、壁紙はロールで販売されています。無地の色付きのもの、繰り返し柄や大柄デザインのテクスチャのものなどがあります。デジタル印刷、スクリーン印刷、輪転印刷、グラビア印刷、サーフェス印刷など、さまざまな印刷方法で製造されています。
3. 紙やすり
さまざまな粒度の紙やすり
用途:素材の表面を滑らかにする、粗くする、または表面から材料を除去する
紙やすりは、紙または布を複数の層に重ねてできており、片面に研磨剤が塗布されています。さまざまな目の粗さのものがあり、目の粗さは、粒度に反比例する数値として表されます。 30番や50番のように数字が小さければ目が粗く、1200番のように数字が大きければ目が細かいことを示します。
紙やすりに使用される最も一般的な研磨剤は、酸化アルミニウム(低コストで幅広い粒度を持つ)、炭化ケイ素(湿式研磨で一般的)、エメリー(金属の研磨に使用)、およびガーネット(通常は木工で使用)です。
2. インクジェット紙
用途:印刷、一部の本の表紙の装飾層として
インクジェット紙はインクジェットプリンター専用紙です。一般に、白色度、不透明度、坪量、平滑度によって分類されます。インクジェット紙は一般的に3つに分類されます。
・グロッシーペーパーは、表面に光沢があります。
・ラスターペーパーは、グロッシーより光沢が抑えられています。
・メタリックペーパーは、ポリエチレンテレフタレートでできており、一部の本の表紙で鏡のような装飾層として使用されます。
インクジェット紙は、コピー機やタイプライターでの使用のためにデザインされた事務用紙とは異なります。事務用紙は通常濡れることはありません。高品質のインクジェット用紙では、繊維を通して湿気を逃がすことができます。インクジェット紙には、インクを吸収し、横方向への広がりを防ぐ最適な吸収性があります。
1. クラフト紙
無漂白のクラフト紙
用途:包装、封筒、油で満たされた変圧器の電気絶縁
クラフト紙(または板紙)は、硫酸パルプ化プロセスによって製造されます。このプロセスでは、水、硫化ナトリウム、および水酸化ナトリウムの高温混合物で木材チップを処理します。
無漂白(天然)のクラフト紙は薄茶色で、漂白された(人工)クラフト紙は白色です。無漂白のクラフト紙は、標準の包装紙の中で最も強度が高く、重包装や工業用の袋の材料など、高い強度が必要な場合に使用されます。
一方、人工のクラフト紙は最も強度が高い白色紙であり、強度と外観の両方が必要な場合に使用されます。主に封筒、ラベル、砂糖袋の製造に使用されます。
クラフト紙はラミネート加工またはコーティングにより、強度とバリア特性を強化することもできます。たとえば、ポリアミン樹脂またはポリアミド樹脂をクラフト繊維に添加し、次に加熱して、湿度の高い環境で使用できる湿潤強度のクラフト紙を作成します。