・心臓発作の生存者のうち犬を飼っている人は、早期死亡のリスクが最大で33%低いことが、新たな観察研究により明らかになった。
・犬を飼っている人は、飼っていない人に比べて、全死因死亡率【あらゆる原因による死亡率】が24%、心臓発作後の死亡率が65%低下していることがわかった。
犬を飼うことと心血管疾患との関係については、これまでにも様々な研究が行われています。その多くは、自律神経緊張の改善、ストレスに対する交感神経反応の低下、全身血圧の低下、脂質プロファイルの改善、急性冠症候群後の生存率の向上など、有益な効果を報告しています。
また、ペットの飼育(主に犬や猫)は、身体活動レベルの向上と関連することが示されています。いくつかの小規模な研究では、犬を飼っている人の心臓発作後の死亡リスクが低いことが報告されていますが、他の調査ではこれらの結果を再現できていませんでした。
国際的な研究チームが行った新しい研究と別のメタ分析によると、犬を飼うことは、特に一人暮らしの脳卒中や心臓発作の生存者において、より長い人生とより良い心血管系の転帰【疾患・怪我などの治療における症状の経過や結果】につながる可能性があります。
犬を飼っている人と飼っていない人の健康転帰の比較
以前の研究で、運動不足や社会的孤立が、患者にどのような悪影響を及ぼすかが明らかにされています。
今回の研究では、スウェーデン全国患者登録データを用いて、脳卒中または心臓発作後の患者(40歳~85歳)の健康状態を分析しました。すべての患者は、2001年から2012年の間に虚血性脳卒中または心臓発作を経験したスウェーデンの住人です。
研究チームは、犬を飼っている患者と飼っていない患者の健康転帰【疾病の予防や治療の結果として生じる健康状態】を比較しました。その結果、犬を飼っている人は、脳卒中や心臓発作による死亡リスクが低いことがわかりました。
具体的には、脳卒中の場合、退院後に子供やパートナーと同居している患者の死亡リスクは12%低く、一人暮らしの場合は27%低いことがわかりました。一方、心臓発作の場合、退院後に子供やパートナーと同居している患者の死亡リスクは15%低く、一人暮らしの場合は33%でした。
記録では、約154,600人の患者が脳卒中を起こしており、そのうち約4.8%が犬を飼っていました。また、約181,700人の患者が心臓発作を起こしており、そのうちの約5.7%が犬を飼っていました。
調査対象母集団のフローチャート
研究チームまた、10件の異なる研究から得られた380万人以上の患者のデータを検討しました。この10件のうち、9件の研究では全死因死亡の転帰を比較し、4件の研究では犬を飼っている人と飼っていない人の心臓病の転帰を比較しました。
その結果、犬を飼っている人は、飼っていない人に比べて、全死因死亡のリスクが24%減少し、心臓発作後の死亡のリスクが65%減少していることがわかりました。
この研究は、犬を飼うことが死亡リスクの低下と長寿につながることを明確に示しています。これは、孤独感やうつ病の減少、身体活動の大幅な増加によるものと考えられます。
研究チームは大規模なサンプルを分析しましたが、潜在的な誤分類(飼うことをやめた、犬の死亡など)がこの研究の結果に影響を与えている可能性はあります。
また、犬を飼うことのポジティブな効果を確認し、病気予防のために犬を飼うことを推奨するためには、さらなる研究が必要です。今後の研究では、犬を飼うことで心血管系の転帰がどのように変化するか、また、犬を飼うことの社会的・心理的な利点は何かについて検討する予定です。