・新しい観察研究により、余分な体重が増えるほど、うつ病を発症する可能性が高くなることが示唆された。
・体脂肪が蓄積される部位は、うつ病の発症確率に影響を与えない。
アメリカ国立衛生統計センターの報告によると、アメリカでは9,900万人以上の成人が太り過ぎ【BMI 25以上】で、7,000万人が肥満【BMI 30以上】です。実際、アメリカにおける肥満率は世界で最も高くなっています。
肥満とは、体脂肪が過剰または異常に蓄積した状態と定義されます。インスリン非依存型(II型)糖尿病、特定の癌、心血管疾患などの一連の疾患のリスクを高める、公衆衛生上の大きな懸念事項のひとつです。
これまで、多くの観察研究により、肥満とうつ病の関連性が示されてきました。例えば、2010年に行われた研究では、うつ病の人は肥満になる可能性が58%高く、肥満の人はうつ病になる可能性が55%高いことが示されました。
しかし、これらの研究はメンデルのランダム化解析、つまりゲノムワイド関連解析のデータを使用して肥満とうつ病の関係を分析する遺伝疫学の手法に基づいていました。
この手法では、身長と体重のみで算出されるBMI(body mass indexの略【体格指数】)を用いて肥満を測定していました。そのため、正確なデータを得ることができません。
例えば、体脂肪量が少なく筋肉量が多い人(主にアスリート)は、BMIが25を超える人が多く、一般的な定義によれば、これは太り過ぎとみなされます。明らかに、これはあまり意味がありません。
より正確なデータを得るために、デンマークのオーフス大学病院とオーフス大学の研究チームは、2つの巨大なデータセットのデータを調査する新しい研究を実施しました。
1) UKバイオバンク:身体計測と遺伝子変異の関連性に関するデータ(332,000人分)からなる。
2)精神疾患ゲノミクスコンソーシアム:うつ病と遺伝子変異の関連性に関するデータ(48万人分)。
研究チームはさらに深く掘り下げて、体脂肪量とうつ病のリスクとの特定の関係を分析することができました。
この研究の目的は、大規模なゲノムワイド関連解析の結果を用いて、メンデルのランダム化解析によりBMIとうつ病の生物学的に有益な特定の要素との関係を評価することにより、肥満とうつ病の関連についての理解を深めることでした。
一次解析では身長、体重、全身脂肪量、全身無脂肪量、全身脂肪率、二次解析では15の特定部位における無脂肪量、脂肪量、脂肪率に着目しています。
結果
この研究では、余分な体重が増えるほど、うつ病を発症する確率が高くなると結論付けています。具体的には、余分な脂肪が10kg増えると、うつ病になる確率は17%上昇します。
脂肪が蓄積された身体の部位は、うつ病になる確率にとって重要ではありません。つまり、余分な体重が増えることは、(生物学的な結果ではなく)メンタル面への影響であり、最終的にうつ病のリスクを高めることにつながるのです。
今回の調査結果は、余分な体脂肪を減らすことで、うつ病のリスクを減らすことができることを明確に示しています。そのためには、不健康な食事を避け、低カロリーで栄養価の高い食品を中心に摂ることが一番です。