・若い恒星 PDS 70の周りで惑星が形成される様子が初めて捉えられた。
・惑星探査機「SPHERE(スフィア)」が、波長や時間帯を変えながら観測を行った。
・この惑星のスペクトルは、惑星が曇った大気を持っていることを示唆している。
惑星の形成と進化に関する理解は、最初の太陽系外惑星の発見(1995年)以来、大きく発展してきました。今日、私たちは膨大な数の惑星系構造の多様性に直面しています。
惑星が形成される場所の特定、形成時間スケールの制約、そしてそのような天体の物理的性質の解析は、いまだ挑戦的な課題です。そのほとんどは、原始惑星系円盤から得られる間接的なパラメータに基づいています。
最近、欧州南天天文台は、塵の円盤の中にある若い星のまわりで惑星が形成される様子を初めてとらえました。生まれたばかりの惑星は、PDS 70という若い矮星の周りにある原始的な塵とガスの円盤を通り、道を切り開いています。
画像の撮影に使用した装置
この画像は、欧州南天天文台の超大型望遠鏡に搭載された補償光学装置SPHERE (Spectro-Polarimetric High-contrast Exoplanet REsearch【分光偏光高コントラスト太陽系外惑星探査】) によって撮影されました。近赤外線と可視光で動作し、太陽系外惑星の直接撮像、偏光観測、分光観測を行うことができる装置です。
SPHEREは、CPI(Common Path and Infrastructure)、IRDIS(Infrared Dual-band Imager and Spectrograph)、Integral Field Spectrograph、Zurich Imaging Polarimeterなどの多数のサブシステムで構成されています。
マックス・プランク天文研究所(ドイツ)の研究者がデータを解析したところ、この惑星の大気は曇っていることが判明しました。また、惑星の明るさを複数の波長で測定し、惑星の大気についてより深い知見を得ることができました。
生まれたばかりの惑星
新惑星PDS 70Bの誕生
出典:欧州南天天文台/A. Müller ほか
暗い中心部の右側に、惑星が明るい点としてはっきりと見えています。中心星から約18億マイル【約29億㎞】離れた場所にあり、これは太陽と天王星の距離と同じです。
中央の黒い円形はコロナグラフによるものです。これは、恒星など近傍の天体からの直接光を遮断するために開発された望遠鏡のアタッチメントです。このコロナグラフによって、PDS70の明るさに圧倒されてしまうような、より暗い円盤を検出することができます。
ほとんどの惑星は、矮小星の周りにあるこのような円盤の中で形成されます。しかし、そのような円盤の中に生まれたばかりの惑星があるという確かな証拠を、私たちはまだ発見できていませんでした。なぜなら、これまでのところ、これらの惑星の大部分は円盤の中の特徴に過ぎなかったからです。
このデータから、PDS 70Bは木星よりも大きな巨大ガス惑星であり、その表面温度は1000℃近くであることがわかりました。ちなみに、太陽系で最も気温の高い惑星は金星で、平均気温は467℃以上です。
PDS 70周辺の広視野の空
出典:欧州南天天文台
PDS 70の惑星伴星は、中心に巨大な「穴」を持つ原始惑星系円盤を刻んでいます。科学者たちは、10年以上前からこのような内側の隙間について知っており、惑星と円盤の相互作用によって生じたと推測していました。そして今、SPHEREなどの先進的な観測装置のおかげで、この惑星を実際に観測することができるようになったのです。
この成果は、非常に複雑であまり知られていない惑星進化の初期段階を知るための新しい窓を提供するものです。また、惑星の大気や物理的な性質を明らかにすることで、惑星形成の理論モデルを検証することができます。