・超音波を利用した空中浮遊型Volumetric Display【立体ディスプレイ】の実証実験が行われた
・そのホログラムは、視覚、聴覚、触覚の3Dコンテンツを提供する。
・超音波を発生させる超音波振動子のアレイを用いて、微小なポリスチレンン粒
子を浮かせて制御する。
既存のホログラフィック・ディスプレイでも、メガネをかけずに3Dの視覚コンテンツを作成できますが、応答時間や視覚の持続性の能力に限界があります。
今回、サセックス大学と東京理科大学の研究者らは、視覚だけでなく、聴覚や触覚を伴った3Dコンテンツを提供するアニメーション3Dホログラムを開発しました。
具体的には、超音波を利用した空中浮遊型の立体ディスプレイの実証を行いました。「multimodal acoustic trap display(MATD)【マルチモード音響トラップディスプレイ】」と呼ばれるものです。このシステムでは、音響的に粒子を捕捉し、その粒子にRGB三原色の光を当てて色をコントロールします。
装置
この装置は、2つの超音波振動子のアレイで構成されており、音波を発生させて、幅2ミリの小さなポリスチレンン粒子1個を浮かせて制御します。
聴覚と触覚のコンテンツを同時に提供するために、MATDは二次トラップによる時間多重化、振幅変調、および位相最小化を使用しています。
この粒子は、水平方向に最大3.75m/s、垂直方向に最大8.75m/sの速度で動くため、既存の光学・音響ホログラフィー技術よりも優れた粒子操作が可能です。
LEDが赤、緑、青の光を粒子に当てると、物体の形が立体的に浮かび上がります。粒子が動くと、急速に変化するLEDがディスプレイに光を当てて色を出します。
粒子は人間の目が追いかけることのできない速さで動いているため、視聴者は完成した3次元の形を見ることになります。目の錯覚(2次元の物体を3次元の物体に変換して見えるように脳を騙すこと)はありません。
また、このホログラムは実際に3次元空間に存在しているため、どの角度から見ても画質が劣化しません。さらに、この技術は眼精疲労の原因にもなりません。
振動子はまた、視覚的な効果に加えて、音波を発生させる周波数で粒子を振動させます。この振動を調整することで、全可聴範囲にわたる音波を発生させることができます。つまり、動く粒子は、小さなスピーカーとしても機能する「話す顔」の画像を生成することができ、顔は話すこともできるのです。
超音波を発生させることで、ディスプレイに触覚を持たせることも可能です。たとえば、ホログラムに手を近づけると、蝶の羽ばたきを感じることができます。
画像提供:Nature
今回開発した試作では、幅10cmの空気の立方体の中に映像を作り出すことができます。つまり、バーチャルなコンテンツを感覚的に再現できる立体ディスプレイに近づけるようになるのです。
今後の展望
近い将来、より強力な振動子を使って、より大きなアニメーションを生成したり、複数の粒子を使用したりすることが可能になるでしょう。ただし、複数の粒子を同時に照らすというのは難しいことです。
この技術は、音場周波数率(40kHz)でのアコースティック・トラップの位置決めと振幅変調を可能にし、マルチモーダルな3Dディスプレイへの新たな扉を開きます。また、物質を非接触で高速に操作することができ、生物医学やコンピュータによる製造への応用が期待されます。