・土星の環を利用して、土星の地震学が研究されている。
・土星の一日の長さは、計算上では10時間33分38秒である。
土星の自転を測定することは、実は簡単ではありません。というのも、土星には自転を監視するための目印となる固体表面がないからです。土星は巨大なガス惑星で、そのほとんどが水素とヘリウムで構成されています。
地球とは異なり、土星の回転軸は磁軸とほぼ完全に一致しています。また、土星の各部分はそれぞれ異なる速度で回転しているため、土星の回転速度を正確に計算するのはさらに複雑です。
それでも、天文学者は土星の環を使って、土星の地震を研究することができます。現在NASAのエイムズ研究センターに勤務する研究員のマーク・マーリーが1990年に発表した論文には、土星の環の特徴を抽出するための計算方法が示されていました。
昨今では、NASAの土星探査機カッシーニのおかげで、マーリーの予測通りの場所で環の特徴を検出するために必要なデータが揃っています。最近、カリフォルニア大学サンタクルーズ校の研究者たちが、この観測データを使って土星の自転速度を正確に測定しました。
土星の内部振動が環に影響を与えていることが判明
その研究チームは、土星の内部振動が環の中に波のパターンを作り出していることを分析しました。環はこの振動に反応し、集中的に敏感な地震計として機能しています。
土星はそのような摂動【太陽の引力を受けて楕円軌道上を動く太陽系の天体が、他の惑星の引力を受けて楕円軌道からずれること】のために、内部構造に支配された周波数で振動しています。地球が地震で振動するのと同じことです。この振動の主な原因は、土星の内部構造における熱による対流です。
この内部振動により、惑星内の特定の領域の密度が変動し、惑星外の重力場が同じような周波数で振動します。土星の環もこの振動を受けており、特定の場所ではその振動が環の軌道と共鳴し、エネルギーが蓄積されて波となって伝わっていくのです。
研究者たちは、この波のパターンを土星の内部構造と比較しました。その結果、これらの波の大部分は、環の外側を周回する土星の衛星によって作られていることがわかりました。
土星の惑星
画像提供:NASA
しかしながら、環の中のいくつかの特徴は、惑星自身の振動から生じるものです。これらの特徴は、土星の内部構造や内部振動について、より深い洞察を提供する可能性があります。
研究チームは、土星内部のモデルをいくつか作成し、それらを用いて内部振動の周波数スペクトルを推定し、その推定値と土星のC環(探査機カッシーニによる)で記録された波を照合しました。
この研究の大きな成果の一つは、土星の自転速度を新たに測定したことです。計算上では、土星の1日の長さは10時間33分38秒です。
今回の研究は、土星の環状構造が、土星の固有振動の揺れの感度の高い地震計として機能しているという、数十年来の仮説を裏付けるものです。C環で確認された波は、土星の内部構造に関する重要な制約を提供しており、それは静的な重力場から得られる制約とは概ね独立しています。さらに、この研究は、将来、太陽系内の他の巨大惑星の内部構造をモデル化する際にも役立つでしょう。