医療科学は大きな発展を遂げてきました。ある土地に固有の技術や薬草から、洗練された機械や複雑な薬に至るまでです。世界中で、人々が強く長生きできるのは、これらの医薬品のおかげです。しかし、薬だけでなく、ウイルスや細菌も進化を遂げているのです。
つまり、薬と病気は互角であり、一方が一歩進めば、もう一方が二歩進むという正比例の関係にあるのです。ですが、この記事では、ウイルスやバクテリアの話ではなく、「毒」の話をします。
毒は人類の歴史において深い関わりがあります。神聖ローマ帝国皇帝カール6世からアラン・チューリング【イギリスの数学者】に至るまで、すべて異なる種類の毒で亡くなっています。そして、広島と長崎の原爆投下の余波を忘れることはできません。
以下に、地球上で最も致死性の高い物質であり、世界中で死者を出している12種類の物質をリストアップしました。『Dr.HOUSE』【2004年から2012年までアメリカで放送された、1話完結型のテレビドラマ】をご存知でしょうか?もしファンの方がいらっしゃれば、あの医療シリーズで紹介された医療事例のいくつかを見て驚かないで下さいね。
12. リン化アルミニウム
リン化アルミニウム中毒は、金属中毒による死亡や健康障害の主要な原因のひとつで、特にアジアで多く見られます。農薬によく含まれるリン化アルミニウム【大気中の水分と反応して毒性の強いホスフィン(リン化水素)を生じるため、殺虫剤の成分として用いられる】にさらされると、命にかかわることがあります。心筋炎(心臓の壁の炎症)、多臓器不全を引き起こし、最終的には死に至ることがあります。リン化アルミニウムのLD50(致死量)値は約0.15~0.5gです。
11. 放射線症候群
最も致死性の高い毒作用の一種ですが、その希少性から、このリストのはるか上位に位置しています。致死性の高い放射性元素を浴びた後、DNAやその他の重要な分子構造が損傷し、体内の細胞が劣化し始めるのです。
深刻さのレベルは放射線の被曝量に依存しますが、少量の場合でも吐き気や嘔吐を引き起こす可能性があります。長く続くと、神経学的な欠陥、発作、震えを引き起こし、死に至る可能性があります。
10. カドミウム
カドミウムは自然界に存在する金属であり、主に工業地帯で人体がさらされる一方、喫煙も人体へのカドミウム摂取の主な原因となっています。通常、人体への曝露量が少ないため、微量のカドミウムが検出された場合でも、過剰摂取の状況が発生することがあります。カドミウムを摂取すると、すぐに腎臓や腎不全になります。骨が柔らかくなり、骨粗鬆症(骨密度の低下)につながり、衰弱します。
9. 鉛
人体が鉛にさらされると、脳に深刻なダメージが与えられ、永久的な精神的問題を引き起こす可能性があります。初期症状として、便秘、頭痛、記憶喪失、潜在的な問題を引き起こす可能性などがあります。汚染された水、腐敗した食品、包装された消費者向け製品の消費は、鉛中毒の主な原因の一部です。急性鉛中毒の永続的な影響としては、周期的な発作、貧血があり、最終的には死に至る可能性があります。
8. テトロドトキシン
分子構造
テトロドトキシン(TTXと略称される)は、非常に強力な神経毒であり、主にフグやヤマメに含まれます。東京都福祉保健局の発表によると、フグを食べた人の致死率は7%近くあり、フグは人体へのテトロドトキシン摂取の最大の原因となっています。現在、この毒素に対する解毒剤は知られていませんが、アメリカ陸軍感染症医学研究所が開発した抗体が将来的に使用できる可能性があるとの予備的な研究結果もあります。
7. シアン化物
シアン化物陰イオンの球棒モデル【化学構造を立体的・空間的に表した分子モデル】
シアン化物中毒は、人体がシアン化物に著しくさらされることによって引き起こされます。多くの金属中毒と同様に、シアン化物の過剰摂取の診断は非常に困難です。急性症例の場合、体内の細胞は低酸素状態の時のようにATP(アデノシン三リン酸)を作ることができなくなります。
初期症状としては、軽い頭痛、極端に速い心拍数、息切れなどがあります。その後、発作や低血圧が起こり、心臓停止に至ることもあります。急性症例の場合、長期的な神経障害も記録されています。
6. リシン
画像出典:AzaToth
リシンは自然界に存在する物質で、かなりの量を浴びると人体に致命的な影響を与える可能性があります。体重1キログラム当たり22マイクログラム程度の量を摂取した場合、その毒性の多くは胃の中で中和されるため、さほど危険ではありません。しかし、体重1キログラム当たり1mg程度のように、より大量に摂取した場合、死に至る可能性があります。リシンの正式な医療用途はありませんが、腫瘍の治療に使用できる可能性があります。
5. ヒ素
ヒ素中毒は、人体内のヒ素の濃度が上昇することによって引き起こされます。ヒ素は周期表の原子番号33の元素で、自然界には鉱物中に硫黄や他の金属と結合して存在しています。ヒ素は、お米から水まで、私たちが摂取するほとんどのものに含まれていますが、この元素の曝露量が高くなると、下痢、激しい腹痛、脳疾患などを引き起こす可能性があります。また、長期的には、癌の原因になることもあります。
4. 水銀
水銀中毒は、人間が知る限り最も危険な金属中毒のひとつです。主に水銀に直接さらされることによって引き起こされますが、魚の大量摂取が、人間の水銀中毒の最も一般的な原因になっています。症状は摂取量と期間によって異なりますが、脱力感、筋肉の協調性の低下、しびれ、ひどい発疹、記憶喪失などがよく見られます。
非常に高いレベルの水銀中毒は、水俣病(神経症状)や肢端疼痛症(皮膚症状)を引き起こす可能性があります。水銀に長時間さらされると、腎臓が部分的に機能しなくなり、脳の機能が低下します。
3. バトラコトキシン
バトラコトキシンは、カエル、鳥、甲虫の特定の種に多く含まれ、地球上で最も危険な天然由来の心毒性物質のひとつです。地球上で最も毒の強い動物のひとつであるヤドクガエルは、この毒を1mgほど保有していますが、これは人間10〜15人を殺すのに十分な量です。この毒はヤドクガエル以外にも、ズアオチメドリにも含まれています。
2. ヘビの毒
ナイリクタイパンの生息範囲
世界には、その毒で動けなくなるばかりか、瀕死の状態にまで追い込まれる凶暴なヘビがたくさんいます。中でも、現在発見されている毒ヘビで最も強力な毒を持つのは、オーストラリア大陸にのみ生息するナイリクタイパンです。
マウスのLD50値に基づくと、ナイリクタイパンの毒はヘビの中で最も強力です。1回の平均毒量は約44mgで、このヘビが1回噛む量で、人間なら約100人、実験用ラットなら25万匹が死ぬと言われています。ガラガラヘビの10倍、一般種のコブラの約50倍の毒を持っています。
1. ボツリヌス毒素
ボツリヌス毒素のイラスト化
ボツリヌス毒素は全部で8種類知られており、そのうちの1種類は世界で最も致死性の高い物質として知られています。この8種類のボツリヌス毒素はA~H型に分類され、A型とB型は健康への害が中程度でボトックス【しわ取り注射による若返り術】の名で市販もされていますが、C型とG型はあまり見られず、E型とF型はいくつかの深刻な健康障害を引き起こすことがあります。
H型毒素はシアン化水素の4000万倍も強いとされ、80ナノグラムまたは10億分の2グラムの投与で平均的な人間を殺すことができます。LD50値(ヒトの致死量の中央値)は、直接注射した場合は約1.3~2.1ng/kg、吸入した場合は10~13ng/kgと推定されています。非致死量のボツリヌス毒素は、マウスを一時的に1ヶ月間麻痺させることができます。