医薬品は私たちの日常生活において重要な役割を果たしています。医薬品の無い生活を想像することは、特にこの情報化時代には不可能に近いでしょう。
医薬品が無ければ、様々な致命的な病気の治療法もなく、ポリオも根絶されず、人類は常にウイルスやバクテリアの奴隷であり続けていたはずです。
医薬品の発見は、医学の分野に革命をもたらしました。この記事では、何十億人もの命を救った、人類史上最も重要な18の医薬品をご紹介します。
18. ステロイド
ステロイドホルモン(空間充填モデル)
ステロイドはアスリートのパフォーマンスレベルを向上させるためだけに使用されるとお考えなら、大間違いです。ステロイドは多くの病状で実際的かつ「合法」的に使用されているのです。これらの疾患には、全身性血管炎(血管の炎症)や筋炎(筋肉の炎症)などが含まれます。ステロイドは、関節炎、リウマチ、(全身性)紅斑性狼瘡、痛風などの複雑な病状の治療にも使われます。
17. レボドパ(L-ドパ)
レボドパの構造
レボドパは、パーキンソン病や瀬川病(ドパミン反応性ジストニア)に対して有効な薬剤であり、患者の中枢神経系におけるドパミン濃度を高めるために使用されます。
レボドパの最初の試験は1950年代にノーベル賞を受賞した科学者アルビド・カールソンによって行われましたが、この薬物による実用的な治療が臨床的に可能になったのは、1957年にジョージ・コッツィアス【ギリシャの科学者】とその同僚たちが行った研究の後でした。
16. ラシックス
画像出典:Melvil
ラシックスは、一般的に認知心不全(浮腫)、肝臓、慢性腎臓病後のさらなる障害を防ぐために使用されます。1962年に初めて発見され、国連のWHO【世界保健機関】がリストアップした必須医薬品のひとつであるものの、その過程で他の違法薬物を隠蔽する能力に対する深刻な懸念から、世界アンチ・ドーピング機構の禁止薬物リストの上位にも入っています。
15. ラノキシン
ラノキシン【商標名】またはジゴキシンは、心房細動/粗動や心不全などの様々な重篤な心臓疾患を治療する、もうひとつの重要な医薬品です。現在では利尿薬やACE阻害薬など、より進歩した医薬品にその座を奪われていますが、他の治療を行っても改善の兆しが見られない患者の治療にはまだ使われています。ジゴキシンは妊娠後期の中絶にも使用されます。
14. 避妊薬
様々な避妊薬
産児制限や避妊手段は古くから使われてきましたが、より効率的で効果的な方法が広まったのは20世紀後半からです。より良い避妊手段の導入は、経済的にも社会的にも世界に良い影響を与えています。
13. アダリムマブ
ヒュミラ自動注射ペンの構成要素
ヒュミラという名称で市販されており、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、慢性乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、膿疱性汗腺炎(慢性皮膚炎)などに広く使用されています。この抗炎症薬は、1990年代後半、Bioresearch Corporation(BASF)とCambridge Antibody Technology社との共同研究プロジェクトで初めて発見されました。
12. 化学療法薬
現代化学療法の父、シドニー・ファーバー
化学療法は、がん細胞を破壊するために複数の抗がん剤を使用する、実際に可能な多くのがん治療のひとつです。現在までに30種類以上の化学療法薬があり、いくつかのカテゴリーに分類されています。
がんの治療に化学療法剤が初めて使用されたのは1940年代ですが、現代のがん化学療法の始まりは(意図的ではないものの)第一次世界大戦の初期、ドイツ軍が連合軍に対して窒素マスタードガスを使用したことに端を発します。
11. ジドブジン
ジドブジン(AZT)の構造図
不治の病ではあるものの、HIV/AIDSの影響は、高活性抗レトロウイルス療法(HAART)の助けを借りて、効果的に遅らせることができます。この療法は、逆転写酵素阻害薬として知られる新しいクラスの薬で構成され、ジドブジン、より一般的にはAZTはその重要な一部です。
AZTは、妊娠中に母子感染するのを防ぐために使用されます。この薬はPEP(曝露後予防)にも使用され、ラミブジンなどの他の抗レトロウイルス薬と併用することで、致死的なウイルスに最初に曝露された後の感染リスクを効果的に低減します。
10. アルプラゾラム/ザナックス
フォーブス【アメリカで発行されている経済誌】によると、アルプラゾラム(一般的には商標名ザナックスとして知られている)は、2010年に米国で最も処方された薬の第12位でした。ザナックスは強力な鎮静薬および抗うつ薬で、化学療法中や化学療法後に引き起こされる吐き気とともに、パニック障害や不安障害の治療に使用されます。
ザナックスはベンゾジアゼピン系の医薬品に属し、中枢神経系のGABAA受容体においてGABA(ガンマアミノ酪酸)の作用を増幅させ、短時間で筋弛緩作用、鎮静作用、抗不安作用を引き起こします。ザナックスの過剰摂取や大量服用は、健忘症や心理的悪影響を引き起こす可能性があります。
9. HIVプロテアーゼ阻害剤
この医薬品は、その名の通り、HIV/AIDSの治療に使われますが、C型肝炎のいくつかの症例にも使われます。この医薬品はウイルスのタンパク質分解酵素に選択的に結合し、ウイルスの増殖と生成に必要なタンパク質前駆体のタンパク質分解切断を阻害することによって、ウイルスの複製を阻止します。現在、医療用に市販されているHIVプロテアーゼ阻害薬は少なくとも10種類はあります。
8. サルバルサン
サルバルサンの構造
サルバルサンまたは化合物606は、梅毒とアフリカ睡眠病の治療に使用された初期の薬剤のひとつです。サルバルサンは1907年にアルフレッド・ベルトハイム【ドイツの化学者】とパウル・エールリヒ【ドイツの細菌学者・生化学者】によって初めて化学合成されました。そして1909年、日本の細菌学者、秦 佐八郎が数百種類のヒ素化合物を調べているうちに、その抗梅毒作用が発見されたのです。
7. ポリオワクチン
紀元前1403年から1365年の古代エジプトの石板に描かれた(おそらく)ポリオの犠牲者
ポリオ(急性灰白髄炎)は、1789年にイギリスの医師マイケル・アンダーウッドによって初めて明確な病状として確認されました。そして20世紀には、ポリオは保健機関の主要な関心事のひとつとなり、世界の若い世代のほとんどが影響を受けるようになりました。
1930年代後半から1940年代にかけてポリオワクチンが登場すると、一世を風靡しました。ポリオワクチンには基本的に2種類あり、その仕組みは微妙に異なっています。WHOの報告書によると、この2種類のワクチンによって、1988年には年間35万件だった報告件数が、2016年には37件にまで減少したということです。
6. エーテル
歯科医師モートンによる麻酔薬としてのエーテル使用のデモンストレーション
エーテルが効果的な鎮静剤として使われるようになる何百年も前から、エーテルは知られていました。現代のより効率的な鎮静剤や麻酔薬への道を開いたのはエーテルです。意識がある状態で腕を切断されることを想像できるでしょうか?なんとも恐ろしいですよね。
この薬は、患者の脳波や活動を、痛みを感知できない一定の低い位置まで抑制することで効果を発揮します。先に述べたように、エーテルが発見されて以来、多くの種類の鎮静剤がエーテルに基づいて作られてきました。
5. アスピリン
コーティングを施したアスピリン錠
アスピリンは、疼痛、発熱、心膜炎、川崎病などの炎症性疾患の一般治療薬として広く使用されています。また、初期の、あるいは最初の心臓発作の後、2回目の心臓発作を予防するための実用的な用途もあります。アスピリンは単なる頭痛薬ではなく、心膜炎、リウマチ熱、川崎病などの重篤な炎症性疾患の治療に使用されます。
4. モルヒネ
モルヒネのアンプル
モルヒネは天然に存在するアヘン剤で、一般に鎮痛薬として使用されます。1800年代初頭に発見されて以来、モルヒネは兵士の効果的な鎮痛剤として、アメリカの南北戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦などの戦争で広く使用されてきました。現在では、主に心筋梗塞(心臓発作)や陣痛時に使用されています。
非常に有用な薬ではあるものの、長期使用による呼吸障害、低血圧、嘔吐、便秘などの重大な副作用があります。また、中毒率が高く、ほとんどの場合、乱用につながる可能性があります。
3. 天然痘ワクチン
1796年5月14日、最初の天然痘ワクチン接種を行うエドワード・ジェンナー博士
天然痘はかつて世界で最も致命的な病気であり、紀元前1500年あるいはそれ以前から知られていました。歴史家によれば、天然痘はおそらくエジプトで始まり、18世紀半ばには、オーストラリアといくつかの小さな離島を除いて、世界のいたるところで主要な風土病となっていたということです。
すべてが変わったのは1796年、イギリスの医学者エドワード・ジェンナーが天然痘ワクチンを初めて開発したときです。20世紀を通じて、天然痘撲滅のために多くの重要な改良がなされました。記録簿によると、アメリカ大陸で天然痘が最後に流行したのは1971年、アジアの大部分は1972年、バングラデシュは1975年でした。
2. インスリン
重要な医薬品のリストにインスリンは欠かせません。インスリン【膵臓から分泌されるホルモンの一種】は、高血糖を治療する事実上の医薬品です。1型糖尿病、2型糖尿病、女性の妊娠糖尿病(妊娠中の高血糖)、高浸透圧高血糖状態やケトアシドーシスなどの様々な糖尿病合併症に有効です。
1. ペニシリン
1940年代、精製ペニシリンを調製する検査技師
ペニシリンは、間違いなく医学分野で最も重要な発見です。1928年にスコットランドの微生物学者・薬学者のアレクサンダー・フレミング卿によって発見されたものの、抗菌薬として使用されるまでに20年以上かかりました。
これは、ブドウ球菌やレンサ球菌のようなグラム陽性菌に効く、最初の数少ない抗菌薬のひとつとなりました。病理学者セシル・ジョージ・ペインは、1930年11月25日、ペニシリンによるウイルス感染症の治療に初めて成功しました。
効果的ではありますが、ある種の細菌に広範囲に使用されたことで、細菌は進化し、この薬物や他の抗菌薬に対する自然耐性を獲得するようになりました。医学的には、これらの新しいタイプの病原菌はスーパー耐性菌と呼ばれています。