・人は自分のアルファ波をコントロールすることで、より注意力を高めることができる。
・頭頂葉のどちらかのアルファ波を減らすことで、人は自分のしていることにもっと注意を向けることができる。
人の心はさまようものであり、さまよう心は幸せな心ではありません。ハーバード大学の研究によると、人間の脳は目覚めている時間の47%を、起こっていないことについて考えることに費やしているそうです。
ソーシャルメディア、オンライン・ストリーミングサービス、デジタル機器の影響力が高まるにつれ、私たちは非常に気が散りやすく、注意力も年々短くなっています。スマートフォンがあるだけで注意力が散漫になり、パフォーマンスが低下することは、様々な研究により明らかになっています。
MIT【マサチューセッツ工科大学】の研究者たちは、この解決策を見つけたかもしれません。それは、脳波のアルファ波を減らすことです。
彼らは、特定のタスクを行っているときに得られるニューロフィードバック【特定の行動を繰り返すことによって、その行動がスムーズにできるようになることを、脳を鍛える、すなわち脳波の変化という形で証明すること】に基づいて、自分のアルファ波を操作することによって、注意力を高めることができることを発見したのです。
脳波は、大量の神経細胞が互いに通信し、同期した電気パルスによって生成されます。このうち、8~12ヘルツの周波数帯で振動するのがアルファ波です。
研究者たちは、空間認識、ナビゲーション、触覚、注意をつかさどる頭頂葉の片側で、アルファ波を減少させることを学習させる実験が行いました。これにより、人は画面上の物によりよく注意を向けることができるようになりました。
これは、神経科学者が因果関係を観察した初めての研究です。ニューロフィードバックを用いて、人間が注意力を高めることを学べる可能性を示しています。
これまでの研究でも、アルファ波が減ると注意力が高まることが示されていましたが、このアルファ波が注意力を制御しているのか、それとも注意力を制御する他の現象の副作用に過ぎないのかは、明らかではありませんでした。
実験内容
研究チームは、被験者に格子状のパターンを凝視させ、それを見ながら精神的な努力によってパターンのコントラストを上げる(より見えるようにする)よう指示する実験を行いました。被験者全員に、パターンを見つめたときのアルファ波がリアルタイムでフィードバックされました。
頭頂葉の右半球と左半球のアルファ波レベルを測定し、両レベルの非対称性の程度を評価するために、研究チームは脳磁図という機能的神経画像技術を使用して被験者の脳をスキャンしました。
約10分後、被験者はパターンのコントラストを上げることを(自分自身で)学習しました。脳磁図の結果は、アルファ波の非対称性を操作することでそれが可能になったことを示していました。両半球の非対称性が高まると、格子模様はより鮮明になったのです。
被験者は自分の脳波をどのように操作したかはわかりませんが、そうすることで反対側の視覚野への注意を高めることができました。
実験の次の段階では、画面の左右にライトを点滅させ、被験者にその点滅を無視するように指示しました。その結果、右側のアルファ波が減少している被験者の視覚野は、画面の左側で観察される閃光に大きく反応することがわかりました。また、左側のアルファ波が減少している人は、右側で観察される閃光によりよく反応することがわかりました。
次はどんなことを?
高まった注意力の効果はその後も持続しましたが、このような効果がどの程度持続するのかについては、さらなる調査が必要です。また、パーキンソン病に関連するベータ波(あるいは他の種類の脳波)でも、同じような制御が可能かどうかは不明です。
研究チームは、ニューロフィードバックの訓練が、注意障害や精神障害に苦しむ人々に有効かどうか、さらに研究を進めていくそうです。