・研究者らは、銀ナノ粒子を担持した抗菌パウダーを製造するシンプルで “グリーン “な方法を開発した。
・これを塗料に混ぜて、病院やトイレ、キッチンの壁に塗ることで、抗菌コーティングを施すことができる。
銀ナノ粒子は、抗菌剤、触媒、導電性インク、表面増強ラマン分光用基板など、幅広い用途がある。
このたび、インド随一の原子力研究施設であるバーバ原子力研究センターの研究チームが、銀ナノ粒子を担持した抗菌パウダーを製造する新しい技術を開発した。この抗菌パウダーは、塗料に混ぜて表面に塗布できるほか、水の浄化や廃棄物処理にも利用できる。
この抗菌パウダーは、特に感染の可能性が高い場所、例えば病院の壁、トイレ、キッチンなどで非常に役立つ。
抗菌パウダーを開発
一般的に、銀ナノ粒子の抗菌活性と触媒活性は、そのサイズに基づいている。粒子が小さい(10ナノメートル以下)ほど効果的だが、かなり不安定で凝集しやすく、効率が低下する。また、粒径が小さくなると、環境中に粒子が不要に放出されるという問題も生じる。
このような銀ナノ粒子を合成するために、研究者たちは噴霧乾燥法を用いた。これは、過酷な化学薬品を一切使用しない、シンプルで環境に優しい方法である。アラビアゴムというアカシアの木から得られる「グリーン」なバイオポリマーを使用し、化学的還元を可能にし、ナノ粒子をシリカ基板に付着させる。
研究チームがアラビアガムを選んだ主な理由は以下の4つである。
1.このポリマーはコンパクトな球状で粘度が低いため、スプレードライが容易である。
2.水に溶けるので、吸着していないバイオポリマーは簡単に除去できる。
3.水素結合によりセラミック、磁性体、合金基板に素早く吸着する。
4.水酸基、カルボキシレート官能基を有するため、金属をキレート化、還元することができる。
テスト
研究チームは、電界放出走査型電子顕微鏡、高分解能透過型電子顕微鏡、X線回折、フーリエ変換赤外分光法などの高度な手法を用いて、この複合材料のさまざまな特徴を研究した。
ナノ銀担持微粒子|研究者提供
研究チームは、黄色ブドウ球菌(グラム陽性菌)と大腸菌(グラム陰性菌)に対する複合材料の抗菌活性をテストした。その結果、新しい複合材料は低用量で効果的に細菌を死滅させることができることがわかった。また、触媒として使用することも可能である。
塗布後、シリカナノ粒子を磁性ナノ粒子に置き換えて外部磁石を使えば、簡単にシリカナノ粒子を分離できる。
粒子とバイオポリマーの蒸発トリガーによる自己組織化を利用することで、研究チームは、スプレードライ工程で液滴を乾燥させるだけで、金属ナノ粒子を接合できる表面機能化基材を開発することができた。さらに素晴らしいのは、低コストで容易に生産規模を拡大できることである。
一般的に、銀ナノ粒子はアクリル塗料に直接混合されて塗布される。過去の研究によれば、このような塗料から出る粒子の約30%が12ヶ月以内に環境中に放出されるという。研究者たちによれば、この新しい技術ではこの問題はまったくないとのことである。