・科学者たちは、洗濯可能で50%伸縮可能な超薄型有機太陽電池を開発しました。
・大気中・水中で非常に安定した状態で、太陽光を8%の効率で電気エネルギーに変換します。
・企業数社がこの技術の商業化に関心を示しています。
ソーラーパネルの開発は素晴らしいことですが、洗濯可能で伸縮可能な太陽電池ならさらに素晴らしいでしょう。東京の理研化学研究所の科学者たちは、20回の模擬洗濯に耐え、50%の伸縮が可能な新しい有機超薄型電池を開発しました。
これは、大気中・水中で伸縮性と安定性を維持しながら、高いエネルギー効率を実現できる世界初の太陽電池です。
これらの電池はテキスタイル、ネットワークデバイス、外出先でのモバイル機器の充電、活動量計への電力供給など多くの用途が考えられます。技術的には、可能性は無限大です。電池がどのように開発され、今後何ができるのか見ていきましょう。
新しい太陽電池の構造
理化学研究所創発物性科学センター(CEMS)の科学者チームは有機太陽電池の薄い活性層(OPV)を開発しました。待機中・水中で高い安定性を保ったまま、太陽光を8%の効率で電気エネルギーに変換します。
より厚い有機層の場合、最大変換率10%が得られますが、約1マイクロメートルの厚さのOPVとしては、変換率8%は高い数値です。有機素材は非常に薄いため、つぶさずに伸ばすことができます。
この数ヶ月前、同じ層が太陽電池の作成に使用されましたが、伸縮性が十分ではありませんでした。この問題は、引き伸ばしたゴム状のエラストマーシートを(サンドイッチ構造のように)外側に結合することで解決できました。これにより、太陽電池は山と谷のあるアコーディオン状の構造に折りたたむことができました。
エラストマーシートは電池に伸縮性を与えるだけではなく、ある程度防水性もあるため、水中で20回1時間40分の機械的圧縮に耐えることが可能になります。電池の変換効率は、20回の洗浄後20%しか減少しませんでした。
洗濯され、引き伸ばされている有機太陽電池
具体的には、この研究では、高い変換効率(7.9%)と伸縮性(52%)を備えた洗浄可能なポリマー太陽電池が示されています。安定した活性層と逆構造を組み合わせることで、全体の厚さが3マイクロメートルの機械的に安定した超柔軟なOPVが開発し、最大7.9%の電力変換効率を達成、周囲空気環境下で安定した変換効率(1ヶ月後に初期効率の54%)と41%の伸縮性を示しています。
自立型OPVを2時間水に浸した場合、効率の低下は20.8%でした。 2枚のエラストマーの間に柔軟なOPVを挟むと、低下は5.4%まで大幅に抑制されました。
自立型OPVの構造
応用
これらの太陽電池は、体温、心拍数、血圧、皮膚電気活動を測定するセンサーなどの電子機器への電力供給に使用できます。センサーが埋め込まれた繊維素材も多数あります。これらの技術を新型太陽電池と組み合わせることにより、センサーの付いたスマート衣服システムを開発することも可能です。
遠い将来、より高い電圧が実現されれば、衣類に取り付けた電池は、スマートフォンやタブレットなどの携帯機器の充電に使用でき、いつの日か家庭の電力需要を満たすことができるかもしれません。太陽電池を軽量で薄型の電池と統合できれば、その効果はさらに向上するでしょう。
現実に応用されるのは、恐らく3〜5年先のことです。実際、企業数社がこの技術の商業化に関心を示しています。
しかし、商業化への2つの大きな障害は、太陽電池のサイズとコストです。現時点では、それらは10 x 10cmに制限されており、製造にはかなりの費用がかかります。ただし、これは主に活性層のコストによるものです。シートコーティングは驚くほど薄いので、いずれ費用は削減できるでしょう。したがって、大企業が商業化を決定した場合、活性層の材料を大量生産し、費用削減のための新技術を構築することができます。