・針のない最適なB型肝炎ワクチンにつながる可能性のある新しい技術が開発された。
・より安価で、針の滅菌が不要であり、感染や腫れなどの副作用が軽減される。
B型肝炎のようなウイルス性の感染症は、急性および慢性の疾患を引き起こす可能性があります。感染者の血液やその他の体液に接触することで感染します。世界保健機関によると、2億5,600万人以上がB型肝炎を患っており、この感染症により2015年には世界で約88万7,000人が死亡しています。
この感染症は既存のワクチンで防ぐことができますが、その保管には高いコストと安定した環境条件が必要なため、発展途上国の多くの患者はこの致命的なウイルスに対するワクチン接種を受けていません。
そのため、科学者たちは、注射よりも安価で管理しやすい粉末状や滴下式の経口ワクチンの開発を試みてきました。最近、国際的な研究チームが、針のない最適なB型肝炎ワクチンにつながる可能性のある新しい方法を開発することができました。
3D視覚化
特定の種類のカプセル化されたワクチンの挙動を研究するために、研究者は固体物理学で頻繁に使用される技術を利用しました。これにより、他の方法では得られないような重要なデータが得られました。
針のないワクチンの開発で最も難しいのは、人間の消化器官の過酷な環境に耐えられる物質にワクチンを封入することです。体内の標的部位に到達するまでの安全性を確保することが重要なのです。
シリカ【二酸化ケイ素】物質であるSBA-15がB型肝炎ワクチンをカプセル化できることは以前から知られていましたが、なぜこのカプセル化されたワクチンが有効に機能しないのかについては、いまだに謎のままです。
研究チームは、中性子イメージング【非破壊検査の一種】とX線を融合させた特殊な方法で、シリカカプセルの内部の3D画像を生成しました。これにより、シリカ内部でのワクチンの挙動をミクロン単位で詳細に観察することができました。その結果、シリカの内部でワクチンがクラスターを形成し、効果が低下していることを発見したのです。
シリカ粒子のX線写真
上の画像は粒子の表面、下の画像は粒子が透明で中にワクチン(赤色)が入っている様子
画像出典:研究者
彼らは、SBA-15シリカにワクチンを効果的に入れ、体内で最もよく働くようにする方法を考え出しました。この新しい技術は、臨床試験の理解や新しい製剤の開発に大きく貢献することができます。
なぜ経口ワクチンなのか?
針のないワクチンは、特に発展途上国にとって有望なものです。注射による不快感を少しでも減らせるだけでなく、針を滅菌する必要や、感染や腫れなどの副作用の可能性もなくなります。
また、現行のワクチンとは異なり、冷蔵保存の必要がありません。そのため、ワクチンの投与が容易になり、コストも削減できます。
さらに、この3D技術は、他の種類の病気に対する針のないワクチンの製造にも利用することができます。この研究の目的は、Hib感染症、B型肝炎、百日咳、破傷風、ジフテリア、ポリオの6種混合経口ワクチンを開発することです。破傷風とジフテリアに対するワクチンの開発は、すでに進行中です。