3人の物理学者が、現代の場の理論である超重力理論の考案から40年以上を経て、注目されるようになりました。
ダニエル・フリードマン、セルジオ・フェラーラ、ピーター・ファン・ニューウェンハイゼンの3人が、1976年に超重力について定式化したことで、このたび、基礎物理学における特別ブレイクスルー賞(300万ドルが授与される)を受賞したことが、ブレイクスルー賞の代表者により2019年8月6日に発表されました。
「超重力の定式化は、時空間ダイナミクスを記述する際に量子変数を取り入れることの発端となった」- エドワード・ウィッテン選考委員長
3人は11月3日、2020年のブレイクスルー賞授賞式で正式に受賞する予定です。この授賞式は、カリフォルニア州にあるNASAのエイムズ研究センターで開催され、今回で5回目となります。
これまでの受賞者は、1967年にパルサーを発見したジョスリン・ベル・バーネル、スティーブン・ホーキング博士、ヒッグス粒子を発見したCERN【欧州原子核研究機構】の科学者7名です。
超重力とはいったい何なのか、どうやって発見したのか?
私たちの身の回りで起こるすべての出来事の背景には、4つの基本的な力が存在します。それは、重力、電磁気力、弱い力、強い力です。
1960年代から1970年代にかけて、科学者たちは素粒子物理学の「標準モデル」を構築しました。このモデルは、自然界に存在する4つの力のうち、弱い力、強い核力、電磁気力の3つを説明することができます。
このモデルは、数十年にわたり、非常に大きな成功を収めてきました。例えば、2012年に科学者がヒッグス粒子の存在を予測するのに役立ちました。
しかしながら、このモデルは完全とは言い難いものです。アインシュタインの一般相対性理論で説明されている基本的な力である重力は、このモデルでは説明されていません。このモデルによると、いくつかの粒子の質量は、実際の質量よりもはるかに大きいのです。
このモデルを改善するために、科学者たちは超対称性と呼ばれる新しい概念を考え出しました。この概念では、既知の粒子には未発見のパートナーが存在すると提唱しています。つまり、ボース粒子(整数値のスピンを持つ)とフェルミ粒子(半整数のスピンを持つ)という2種類の素粒子の間に関係があるのです。
標準モデルも超対称性も、当初は重力が考慮されていませんでした。
1975年、フリードマン、フェラーラ、ニューウェンハイゼンの3人は、超重力という新しいアイデアに取り組み始めました。彼らの目的は、自然界の4つの力をすべて説明できる理論、つまり、どこにでも通用する理論を構築することでした。
彼らは、一般相対性理論と超対称性の原理を組み合わせた現代的な場の理論を共同で開発しました。手作業で計算するのは非常に困難であったため、約2,000の項を含む複雑な計算を行うコンピュータプログラムを作成しました。
左から、ピーター・ファン・ニューウェンハイゼン、セルジオ・フェラーラ、ダニエル・フリードマン
画像出典:CERN
新しい理論が成立するためには、これらの項がすべてゼロになる必要があります。幸いなことに、コンピュータは100や200の単位で項をはじき出してくれました。そして、数時間後、すべての項の最終値がゼロであることを発見したのです。
超重力は一般相対性理論に取って代わるものではありませんが、これまでの40年間、理論物理学者たちに大きな影響を与えてきました。
例えば、1981年、エドワード・ウィッテンは、超重力を正のエネルギー定理に含め、1990年のフィールズメダル賞を受賞しました。現在、超重力は、最も議論されている理論的枠組みのひとつである弦理論にとって、不可欠な要素となっています。