・新しい薄膜印刷技術は、酸化銅とグリーンレーザーを用いて電子回路基板をプリントする。
・従来の方法よりも効率的かつ安価に印刷することができる。
・光焼結プロセスを採用し、低抵抗化を実現した。
プリント回路基板は、導電性のパッドやトラック、複数の銅のシートを通して電気部品を接続します。これらの部品は通常、回路にはんだ付けされ、トラックは基板材料によって互いに絶縁された固定線として機能します。
こういった基板の主な目的は、回路に使用される部品の重量、サイズ、およびコストを削減することです。過去10年間、数多くのダイレクトプリント戦略が採用されてきました。それぞれに利点と欠点があります。そのひとつが金属ナノ粒子インクの印刷で、シンプルで安価、かつ高速なプロセスです。
従来の方法論よりも安価な基板を効率的に生産できる可能性があるため、この分野への関心は常に高まっています。最近、韓国の順天郷大学校では、レーザー出力、予備焼なまし条件、走査速度、膜厚効果に基づく薄膜印刷技術について研究しました。
その結果、銅ナノ粒子インクとグリーンレーザー光を用いると、電子回路をより効率的に印刷できることを発見しました。以前は銀ナノ粒子インクで実験していましたが、低価格で実現可能な銅に注目したのです。
実験
ナノ粒子の金属インクは、大きな金属に比べて融点が低くなります。たとえば、銅の融点はバルクで1083℃ですが、銅のナノ粒子は、金属を液化するほど溶かさずに加圧・加熱する「焼結」というプロセスを経て、150〜500℃の融点まで下げることができます。その後、合体、結合させます。
研究者らは、波長吸収率の変化に適したグリーンレーザー光を選択しました。また、市販の酸化銅ナノ粒子インクを用い、2種類のスピン速度でガラスにスピンコート【平滑な基材を高速回転させる事により遠心力で薄膜を構成する】し、異なる膜厚を実現しました。
これは、酸化銅層の厚みを薄くし、照射中に溶媒が急激に沸騰することによる気泡の爆発を防ぐために不可欠なステップです。
何度も実験を重ね、最適な予備焼なまし温度は200℃よりやや低い温度であることを突き止めました。また、焼結時の走査速度とレーザーパワーの最適な設定を模索し、回路の導通性を向上させました。
実験の作業手順
出典:研究者
この研究では、0.3〜0.5ワットのレーザー出力で最良の焼結結果が得られ、レーザー走査速度が10mm/秒より遅くなく、100mm/秒より速くても所望の導電性が得られることがわかりました。
フィルムの厚みに関しては、焼結によって厚みが最大で74%減少する(546ナノメートルから141ナノメートル)ことがわかりました。ナノ材料のコンパクトさと接続性は、焼結後の厚みの減少に依存し、過度の厚みの減少は抵抗率の減少につながります。したがって、この場合、抵抗率の測定値は9.5~20μΩ·cm【マイクロオームセンチメートル(抵抗率の単位)】の間に収まります。
この実験から、レーザー焼結のプロセスで膜の損傷を最小限に抑え、均一な焼結を得るためには、酸化銅の膜に溶媒を少し残す必要があることがわかりました。次の研究では、焼結に及ぼす基板の影響を調査します。