・欧州宇宙機関の「ガイア」が、より精度の高い最大の恒星カタログを公開。
・13億個以上の恒星の正確な運動と視差、そして他の天体の性質も含まれている。
・そのデータは、天の川銀河の周りを回る12個の矮小銀河と75個の球状星団の軌道を決定するのに使われている。
欧州宇宙機関(ESA)の探査機「ガイア」【天体の位置や運動について調べる位置天文学に特化した宇宙望遠鏡】が、約17億個の恒星を含む最も豊富な恒星カタログを作成し、私たちの銀河系、天の川の未知の詳細を明らかにしました。
ご存じない方のために説明すると、ガイアは星の正確な距離と位置を測定するために開発された宇宙望遠鏡です。最終的な目標は、恒星だけでなく惑星、小惑星、彗星、クエーサー【恒星状天体】を含む、最大かつ最も正確な3次元宇宙カタログを作成することです。
ガイアは2013年12月に打ち上げられ、総ミッション費用は約10億ドルです。カタログは段階的に公開され、データ量は増えていきます。最初のカタログ(11億個の星の情報を含む)は2016年11月に公開されました。
今回の新しい公開では、約17億個の星の位置がより正確にわかります。どの程度正確なのかというと、いくつかの明るい星については、地球上の観測者が月面にある1円玉を見つけることができる精度に匹敵します。
ガイアが収集したデータとは?
この精度の高さによって、星の視差(太陽の周りを地球周回軌道で1年周回することによって生じる天空の見かけ上のずれ)と、銀河系を通過する実際の運動とを区別することが可能になりました。
このカタログには、13億個以上の星の正確な動きと視差、および他の天体の性質が掲載されています。これにより、ほとんどの恒星までの距離を直接計算することが可能になりました。また、このデータは天文学者が天の川銀河全体に散らばる異なる年齢の星を区別するのに役立つでしょう。
ガイアのデータによる全天のカラー画像
出典:ESA
ガイアは恒星の明るさ情報と色の測定を行い、色と明るさが時間と共にどのように変化するかについても収集しました。また、星間塵【星と星の間に密度の低い状態で存在する固体粒子】が8,700万個の星に与える影響や、1億個の星の表面温度についても伝えています。
このカタログには、太陽系内の14,000個以上の小惑星の位置と軌道が掲載されています。さらに、50万個近くのクエーサーや明るい銀河の位置も指摘しています。
ガイアがカバーする宇宙規模
出典:ESA
この情報は、ガイアによって特定されたすべての天体の天体座標の基準枠を決定するのに役立ちます。これは、今までは電波を使って行われてきました。そして今回、初めて光波長を使ってアクセスできるようになったのです。
銀河の3Dビュー
天の川銀河の周りを回る球状星団と矮小銀河
ガイアは、太陽から数千光年以内にある星の速度(3次元)を測定し、その運動パターンを明らかにしました。また、球状星団(天の川銀河のハローにある古い星系)や、大マゼラン雲や小マゼラン雲などの他の銀河の中の星の運動も観測することができます。
ガイアが提供するデータは、私たちの銀河系を周る12個の矮小銀河と75個の球状星団の軌道を決定するのに使われています。これは、謎に包まれた暗黒物質の分布、活発な重力、天の川銀河の過去の進化の研究に役立っています。
今後の予定
第3弾のカタログは、いくつかの連星や天体の軌道解、改良された視差、位置、運動で構成される予定です。また、第4弾のカタログには、単星以外のカタログ、太陽系全体の結果、変光星の分類が含まれる予定です。最終的なカタログは2022年に公開される予定で、より精密なデータによって銀河系の秘密が明らかになるでしょう。