・土星のリングを構成する粒子は、1秒間に432〜2870キログラムの割合で土星へ流れ込んでいる。
・この状況だと、3億年足らずでリングは消滅する。
太陽系で2番目に大きな惑星である土星は、そのリングの存在により際立っています。リングの中には、土星を周回するマイクロメートルからメートル単位の小さな粒子が無数に存在しています。これらの粒子のほとんどは水の氷でできており、岩石質の物質もわずかに含まれています。
全部で6つのリングがあり、最も大きなリングは直径273,588キロメートルにも及びます。リングは完全な円ではなく、近くの衛星の引力によっていくつかの曲がりを含んでいます。
最近、NASAは、土星のリングがこれまで考えられていたよりも速いスピードで失われていることを確認しました。実際、ボイジャー1号とボイジャー2号から得られたデータによると、土星は現在、最大速度でリングを失いつつあることが判明しています。
リングは一体どこに向かっているのか?
6つのリングはすべて、重力によって土星に引き込まれています(速度はそれぞれに異なる)。より具体的には、リングは磁力線に沿って土星の電離層に流れ込んでいます。その速度は、毎秒432キログラム~2870キログラムで、ほとんどが南側に流れています。この速度だと、リングは2億9,200万年後に完全に消滅します。
それにしても、これらのリングはどのようにして誕生したのでしょうか。リングは土星とともに形成されたのか、それとも後からできたのでしょうか? 最近の知見では後者が有力で、リングは1億年近く前のものであることが示唆されています(土星は45億年以上前)。現在、リングはその寿命の途中にあります。
これらのリングがどのように形成されたかは誰にもわかりませんが、もし土星が後年になってリングを獲得したとすれば、土星の周りを回る小さな氷の衛星が(何百万年も前に)衝突することによって形成されたのかもしれません。おそらく、それらの衛星の軌道が、通過する彗星や小惑星の引力によってゆがめられたのでしょう。
研究者によれば、土星のリングシステムを目撃できる私たちはかなり幸運なのだそうです。また、もしリングが一時的なものだとすれば、現在かすかで薄いリングしかない海王星、天王星、木星の巨大なリングシステムについて、私たちは観察し損ねてしまっただけなのかもしれません。
土星の引力はリング粒子を土星に引き戻そうとし、粒子の軌道速度は粒子を宇宙空間に投げ出そうとします。したがって、リングは現在、この2つの力の間でバランスをとっている状態にあるのです。
リングに降り注ぐ小隕石や太陽からの紫外線から放出されるプラズマ雲は、リング内の微粒子を帯電させます。電荷を帯びた粒子は、土星の磁場の影響を受けることがあります。このとき、帯電した粒子に働く2つの力のバランスが大きく変化し、粒子は磁力線に沿って土星に引きずり込まれます。
土星の上層大気に入り込んだ粒子は気化し、電離層で水と反応します。このような反応により、赤外線で光るH3+イオン(電子2個と陽子3個でできている)の寿命が延びます。
画像出典:ゴダード宇宙飛行センター / David Ladd / NASA
天文学者が、ハワイにあるケック望遠鏡で、この光るH3+イオンを観測しました。その結果、惑星の南半球と北半球で青く光る帯を観測することができ、磁力線に沿って惑星に入り込むリング粒子の量を示すことができました。
今後、研究チームはリング粒子の流出速度がどのように変化するかを観測していきます。土星の公転周期は29.45年で、公転が進むにつれてリングが受ける太陽光の量が変化し、土星に流入するリング粒子の量も変化すると考えられています。