● ある珍しいバクテリアは、これまで観察されたことのない構造で発電能力を持つ
● 研究者達は、低温電子顕微鏡を使用して「ジオバクター・スルフレデュセンス」と呼ばれる細菌の構造の形状と組織を特定
● この発見は、電子機器の小型化、ワイヤーのないペースメーカー、小型で強力なバッテリーの開発に役立つ
バクテリアの中には、一定レベルの電気を通す能力を持ったものが存在しますが、まだ広くは研究が進んでいません。内部構造と機能的役割を特定することにより、科学者はバクテリアが実際にどのように電流を発生させるのか、また効果的で長持ちする微生物燃料電池を大規模に開発できるかどうかの理解に役立てることができます。
バージニア大学ヘルスシステムの研究者達により、土壌や堆積物中に生きるジオバクター・スルフレデュセンスなどの珍しいバクテリアが、どのようにして電気を伝えるのかについて、驚くべき発見がありました。
棒状の形をした微生物Geobacter sulfurreducens(ジオバクター・スルフレデュセンス)は、グラム陰性菌の細胞壁を持っています。これらの細胞は電気を伝導し、電子を長期的電気に変えることができます。完全に配列決定されたゲノムで、発達した遺伝子システムをもつジオバクター・スルフレデュセンスは、細胞外電子伝達の幅広い現象に対するモデル生物として機能します。
自然界でかつて見たことのない生物学的構造
かつて、ジオバクター・スルフレデュセンスは線毛と呼ばれる髪の毛のような付属物を使用して電気を伝えると考えられていました。この考えにはいくつかの理由がありました。
1. 電子伝達細胞は、PiLAタンパク質に対して高レベルのメッセンジャーRNAを示したこと
2. ジオバクター・スルフレデュセンスのアミノ酸配列は他の線毛産生細菌の配列と類似していたこと
3. Sulfurreducens線毛生合成遺伝子のゲノム構成も他の線毛産生細菌と類似していたこと
4. PiLAの欠突然変異は線毛様繊維が欠失しており、細胞外に電子を伝達することができなかったこと
しかしこれらの情報とは裏腹に、導電性のジオバクター・スルフレデュセンス線毛がPiLAで構成されているという直接的な証拠は何一つありませんでした。
研究者達は、低温電子顕微鏡を使用してジオバクター・スルフレデュセンスの細胞外付属物の構造と組成を特定しました。この研究により、ジオバクター・スルフレデュセンスは全く異なるタンパク質から成る、完璧に整列した繊維を通して電気を送っていることを発見しました。
電気コードに金属ワイヤーを使うのと同じように、これらのタンパク質は金属含有分子のコアを取り囲んでいます。このジオバクター「ナノワイヤー」は、細胞外電子受容体に電子を伝導するために使用される変化型線毛で、線毛の太さは人間の髪の毛の10万分の1だといいます。
質量分析、ゲル電気泳導、原子間力顕微鏡、導電率測定は、これらのナノワイヤーが以前はタイプIV線毛であると想定されていた線毛と同じ繊維であることを示しました。つまり、この研究はかつて未知であったシトクロム重合に基づくタンパク質性のナノワイヤーのグループを確立しました。
どのように活用できるか?
この小さな構造は生物学的センサーの開発から汚染除去など幅広く応用できる可能性を秘めています。生きている細胞と電気機器の架け橋として役立つかもしれません。
このようなバクテリアを理解するテクノロジー(低温電子顕微鏡)は5年前までは存在しませんでした。現在は、原子レベルでこのような線毛の構造を分析することができるのです。
近い将来、科学者達はこのような構造を使用して、電子機器を小型化し、ワイヤーなしのペースメーカー、小型で協力なバッテリーの開発、その他の多くの医学的進歩を生み出すでしょう。