・エネルギーのピラミッドは、生態系において生物が他の生物を食べるときの代謝エネルギーの移動を表している。
・このピラミッドは、異なる栄養段階を示すいくつかの帯で構成されている。
・エネルギーは底辺から始まり、すべての栄養段階を通過する。
・健全な生態系を維持するためには、このようなエネルギーの流れが重要である。
食物網【生物の捕食・被捕食関係。いくつかの食物連鎖がからみ合った食物連鎖網】について、「誰が誰を食べているか」という視点で捉えている人がほとんどですが、これでは生物の生産性を明確に説明することはできません。食物連鎖はむしろ複雑なエネルギーの流れのモデルなのです。
このようなモデルをよりよく説明するために、この記事では「エネルギーピラミッド」(または「生態ピラミッド」)と呼ばれる図解を使用します。これは、生態系において生物が他の生物を食べたときに、代謝エネルギーがどのように移動するかを示しています。
エネルギーピラミッドとは?
エネルギーピラミッドとは、ある生態系において、各栄養段階【食物連鎖における各段階】で新たなバイオマス【生物体量:ある空間内をある時点で占める生物体の量】の形で保持されるエネルギー量を表したものです。
このピラミッドはいくつかの帯で構成されており、それぞれが異なる栄養段階を表しています。これらの帯は、誰が誰を食べているかに基づいて構成されています。すべての帯の高さは同じですが、幅は測定する構成要素の数に応じて変化します。
エネルギーピラミッドは、食物連鎖に沿ってある生物から別の生物へのエネルギーの移動を定量化するために使用されます。エネルギー(および帯の幅)は、ピラミッドの下から上に向かって様々な栄養段階を進むにつれて減少します。
そのエネルギーはどこから来るのか?
エネルギーは、太陽から地球に入ってきます。ピラミッドの底部にある生産者(植物)は、太陽光を利用して光合成を行い、代謝エネルギーを作り出します。しかしながら、太陽熱の放射のほとんどは宇宙に反射され、熱に変換されます。光合成の過程で吸収されて食物に変わるのは太陽熱放射の1〜2%に過ぎません。
エネルギーピラミッド
植物は、光合成で作られたエネルギーの約90%を自分の代謝に利用します。残りの10%は植物の組織に蓄えられます。つまり、植物を食べる草食動物(一次消費者)に伝わるのは、エネルギーの10%だけです。
草食動物が食べた10%のうち、約90%は自分の代謝に使われ、10%だけが組織に蓄えられて肉食動物(二次消費者)に食べられます。
このサイクルはピラミッドの頂点に向かって続いており、後続の消費者はそれぞれ前のエネルギー水準の10%しか受け継ぐことができません。ピラミッドの頂点に立つ捕食者は、元の太陽エネルギーのわずか0.01%しか得ることができないのです。
菌類、ミミズ、バクテリアなどの分解者は、死んだ動物や植物の組織に残っている少量のエネルギーを消費します。
これは生態学では「10%ルール」とも呼ばれています。ある生態系において一つの栄養段階から次の栄養段階へとエネルギーが伝達される場合、そのエネルギーの10%しか伝達されないというものです。
健全な生態系を維持するためには、エネルギーの流れが重要です。低次の栄養段階でエネルギーが多ければ、生物はエネルギーをピラミッドの上部へ移すことができます。このエネルギーは通常、1平方メートルあたりの年間カロリーまたは1平方メートルあたりの年間グラムで測定されます。
エネルギーピラミッドの4つの段階
生態系によって、段階の数は異なるかもしれません。ここでは、健全な生態系におけるエネルギーの流れを示す、エネルギーピラミッドの4つの主要な段階を紹介します。
エネルギーピラミッドの栄養段階の図解
画像引用元:dkfindout
第一段階:生産者
食物連鎖の中で生産者となるのは独立栄養生物です。自然のエネルギーを利用して自分の食べ物を作ります。一次生産者の代表例は、植物(陸上)と藻類(水中)です。
植物や藻類は、他の生物を食べるのではなく、光合成によって土壌や海から栄養分を取り込み、自分で食べ物を作ります。
しかし、地球上で太陽の光が届かない地域、例えば深海の熱水生態系ではどうでしょうか。ここでは、一次生産者は化学合成と呼ばれる別のプロセスで食物を作っています。化学合成を行う微生物は、光合成での太陽光の代わりにメタンをエネルギー源としています。
第二段階:一次消費者
エネルギーピラミッドの第二栄養段階は、草食動物で構成されています。草食動物は、自分で食物を生産できず、他の生物に依存して生きている種です。水牛やキリンのような動物が一次消費者で、植物やバクテリア、藻類などの生産者のみを食べます。
一次消費者は、生態系やコミュニティによって異なります。バッタやシカは森の植物を食べますが、カモやオタマジャクシは水辺の植物を食べます。また、大きさも様々で、小さな動物プランクトンから大きなゾウまでいます。
第三段階:二次消費者
二次消費者とは、一次消費者を食べる肉食動物または雑食動物のことです。
肉食動物は他の動物を食べる動物で、雑食動物は植物と他の動物の両方を食べる動物です。たとえば人間は、生産者(植物)も他の消費者(動物)も食べる雑食性です。
野ネズミ、トガリネズミ、ガーターヘビ、キツツキなどは二次消費者の一例です。野ネズミは他の動物と植物の両方を食べるため、一次消費者にも二次消費者にもなります。つまり、一次消費者としての野ネズミは、ガーターヘビなどの他の二次消費者に食べらるのです。
第四段階:三次消費者
三次消費者は、他の肉食動物を食べる肉食動物です。一次消費者と二次消費者の両方を主な食料源として消費します。イヌワシは三次消費者の典型例で、エネルギーピラミッドの第三栄養段階に属するキツネを食べます。
人間は多様な食生活をしており、すべての栄養段階の食物を摂取しているため、第二、第三、第四段階のいずれにも属することになります。
もし人間が菜食主義者であることを選ぶなら一次消費者に分類されますし、穀物で飼育された鶏の肉などを食べれば二次消費者の役割を果たすことになりますが、その鶏が昆虫も食べている場合は、人間は三次消費者に分類されます。
頂点捕食者
頂点捕食者(apex predatorsまたはalpha predators)は、エネルギーピラミッドの最上位に存在します。彼らは決して捕食されることはなく、その分野内の他の生物の個体数を維持するために重要な役割を果たしています。
シャチ、ライオン、トラ、ホッキョクグマ、ワニ、ユキヒョウなどが頂点捕食者の例です。
エネルギーピラミッドの実例
オカラ国立森林公園のシルバー川
画像出典:ウィキメディア
米国フロリダ州のシルバー・スプリングスにあるエネルギーピラミッドの実例を見てみましょう。研究チームが1年間のエネルギーの流れを1メートル四方あたりのキロカロリーで測定しました。
生産者(P)は20,810キロカロリーを得ています。写真でわかるように、木は太陽光からエネルギーを消費しています。研究チームの調査によると、3,368キロカロリーが次の段階である一次消費者(C1)に到達しました。これは、約16.1%のエネルギーが次の段階に移ったことを意味します。
フロリダ州シルバー・スプリングスのエネルギーピラミッド
出典:ウィキメディア
同様に、二次消費者(C2)は383キロカロリー、三次消費者(C3)は21キロカロリーを得ました。これは、C2が前の段階から11.3%のエネルギーを得たのに対し、C3はC2から5.4%しか得られなかったことを意味しています。さらに、腐生性生物と呼ばれる分解者の階層は、約5,060キロカロリーのエネルギーを消費します。
以上のことから、生態系の効率は5%から20%の間にあることが分かりましたが、これはその生態系がどの程度効率的であるかによります。
このエネルギーを測定する他の方法
生態系を分析する他の方法として、バイオマスがあります。そのためにはバイオマスのピラミッドを使います。このピラミッドは、特定の時間に特定の生態系の各栄養段階に存在するバイオマスの量を示しています。
バイオマス・ピラミッド
バイオマスとは、生態系における有機物や生命体の総量を表します。また、エネルギーは通常、1平方メートルあたりのカロリーまたは1平方メートルあたりのグラムで測定されます。
バイオマスのピラミッドは必ずしも直立しているわけではありません。たとえば、池の生態系では、生産者(植物プランクトンなど)の質量は、消費者(昆虫や魚など)の質量よりも低くなっています。これは、植物プランクトンの寿命が非常に短い一方で、繁殖が非常に早いためです。
個体数ピラミッド;a)草原 b)寄生虫の食物連鎖
生態系を分析するもう一つの方法は、個体数ピラミッドです。これは、各栄養段階に存在する個々の生物(バイオマスやサイズに関係なく)の数を示しています。
寄生虫が大きな宿主動物を食べたり、カブトムシが森の木を食べたりする生態系では、これらのピラミッドを「上下逆に」することができます。