告白することがあります。私は、実はパティシエではありません。でも、本物の厨房で働いていたこともあって、お菓子作りはお気に入りの趣味です。キッチンが焼き菓子でいっぱいになったときの素晴らしい光景や音、匂いが大好きなのです。チェリー・パイのフィリングの鮮やかな赤、パイ皮の魔法のようなパリパリ感、シナモンやパンプキン・パイに入れるスパイスの天国のような香り…
ふぅ~、ため息。
失礼しました、何の話でしたっけ? ああ、そうそう。皆さんがパンを焼くかどうかにかかわらず、パティシエやパン職人が日々活用している知識を、皆さんのデザインワークにも生かすことができるのです。どうやってそんなことができるのかって? 今からお話ししますよ!
ヒントその1:手を使う
パティシエにとって最も重要な道具は「手」です。生地、フルーツ、砂糖、ホイップクリームなどの材料を、お客様や友人に喜んでもらえるように成形できるのは、この手があってこそ、なのです。
言うまでもありませんが、デザイナーである皆さんにも「手」があるはずです。たまにはパソコンの画面から離れて、その手を使ってみてください! 私は、PhotoshopやIllustratorを駆使したデザインに行き詰ったときには、立ち上がり、一歩下がって、手作り用グッズを使うのが一番の解決策だと思っています。
そうです、色紙やハサミ、のりを取り出して、やってみるのです。小学生の頃にやっていたように、デザインのアイデアをざっくりとした図画工作で再現してみましょう。スケッチがあれば、それを参考にします。スケッチがない場合は、今からでも描いてみましょう。
切ったり、貼ったり、ということが苦手な方は、他の方法を試してみてください。粘土、裁縫や針仕事、それに、ほら、パン焼きもあります! 焼きたてのクッキーがどれほど心を動かすか、きっと驚かれることでしょう。そんなこと知ってるよ、と驚かない方もいるかもしれませんが。
ヒントその2:作って、検証して、評価する
私がレモンスコーンのレシピを完成させるまでに、何度焼いたかおわかりになりますか? 友人たちは当時、大量のレモンスコーンを食べさせられていたわけです。
完璧で風味豊かな一口を何度でも作り上げることが重要なこの業界では、「泡立てて、すすいで、繰り返し」、批判的な目で作業を検証して評価し、プロセス全体を正確な科学に絞り込むことが不可欠です。
デザイナーの仕事は、クリエイティブな部分だけにこだわるのではなく、時間をかけて改良し、間違いのないように実行することが大切です。カップケーキの上にアイシングを完璧にかけるのと同じことです。
ヒントその3:良い材料を手に入れる
革新的なパティシエのシェフ(自家製のパンを焼く人も)は、生産者農家のマーケットや地元の農協など、地元の業者から新鮮で最高の素材を調達しています。
デザイナーとしてのキャリアを真剣に考えているのであれば、特にフリーランスならば、最高のツールやリソースを自由に使えない理由はありません。ソフトウェアやハードウェア、プリンターなど、すべて、常に100%の力を発揮できるように厳選された物でなければなりません。
そうでないものは、「美味しくない」だけです。
ヒントその4:自分の知識を伝える
ほとんどのプロのシェフは、少なくとも何人かの生徒に、何らかの形でレッスンやヒント、アドバイス、批評をしています。教えることは、学び続けるための最良の方法であり、常に気を引き締め、新進気鋭のクリエイティブなプロたちとの重要なつながりを保つことができるのです。もちろん、教えるために大学の教授になる必要はありません。
自分がまだ技術を学んでいる最中に、1人や2人の生徒を指導できないわけではありません。申し上げたように、教えることは学び続けるための最良の方法であり、私自身、人に教えたときほど多くのことを学んだことはありません。
人々にお返しをすることで、夢にも思わなかった知識や人脈、そして良い運を得ることができるでしょう。
ヒントその5:アイデアを出し合う
プロの高級レストランの厨房では、温かい料理、冷たい料理、ペストリーなどの各部門のシェフが協力して、お客様が何度も足を運びたくなるような料理を作らなければなりません。料理長やレストラン経営者とメニューやレシピの組み合わせを話し合い、知恵と創造力を駆使して、「普通」や「つまらない」という概念を覆すような料理を作らなければなりません。
フリーランスのデザイナーの場合、他のデザイナーと一緒に仕事をする機会はあまり多くないかもしれません。しかし、少なくともたまには他の人からフィードバックや意見をもらい、自分の創造的なプロセスを調整したり、トップレベルを維持したりすることが大切です。もちろん、デザイナーと友達になるべきですが、周辺の業界にいる他のクリエイティブのプロも無視できません。
仕事で写真やイラストを多用していますか? 写真家やイラストレーターを見つけて、彼らがどのように作品を制作しているのかを教えてもらいましょう。印刷会社は、たとえ印刷デザイナーでなくても、自分のソーシャルネットワークに加えるべき素晴らしい人たちです。なぜウェブデザイナーと印刷デザイナーの間でもっとコミュニケーションをとる必要があるのか、その理由について、全部書くこともできますが(いつかそうしましょう)、今のところは「思っているよりもずっと重要なこと」とだけ言っておきます。
ヒントその6:きれいにする
几帳面な人は、この項目を読み飛ばしても構いません。しかし、もしそうでないデザイナー(飴の包装紙や栄養ドリンクの空き缶がデスクやオフィスの床に散乱しているようなデザイナー)であれば、ぜひ聞いていただきたいことがあります。プロの環境で働くシェフには、清潔さを保つための動機付けとして、衛生法というものがあります。
厨房の中で無精者では、長く業務を続けることはできません。遅かれ早かれ、その悪い習慣のせいで、人々から厄介な「困ったちゃん」と見られることになるでしょう。そうなると、罰金を科せられたり、訴訟を起こされたりして、あまり楽しいものではなくなってしまいますよね。
デザイナーは、最終製品が周囲の環境とは関係なく作られているので、技術的には掃除の習慣が甘くても「逃げられる」のです。しかし、アーティストやデザイナーはもちろんのこと、会社員であっても、きれいな環境で仕事をした方が創造性が高まることはよく知られた事実です。
だから、きれいにしておきましょう。芸術性を担うと言われる右脳はあなたに感謝するでしょう。
ヒントその7:アシスタントを使う
もちろん、最も成功し、最も高い給料を得ているシェフには、アシスタントがいて、食材の準備や、技術を必要としない面倒な仕事(例えば、リンゴの芯を取ったり、桃をさいの目に切ったり)を手伝ってくれますが、下級のシェフや料理人でも、下ごしらえの仕事の多くを他の料理人やアシスタント、さらには別の部署に委託していることに驚くかもしれません。例えば、大きなレストランでは、野菜や果物の皮や種を取り除く作業を専門に行う部署もあるのです。
現代のフリーランスのデザイナーは、必要であっても時間のかかる、自分ではやりたくない作業を外注することができます。私は、初めてプロのプログラマーに難しいコーディング作業を依頼したとき、すっかり虜になってしまいました。
たしかに、自分で何かをすることには誇りと達成感がありますが、もし一人で納期を守ることにプレッシャーを感じていたり、クライアントの数が自分一人では対応できないほど増えているのであれば、誰かを雇って仕事を分担してもらうことは恥ずかしいことではありません。そうすれば、より多くの時間を自分の好きなことに費やすことができます。
ヒントその8:学びは骨の折れること
この記事の読者にとっては、仕事をするデザイナーとしてだけでなく、クリエイティブな人間として成長するために、自分自身を教育することが必要不可欠であることは言うまでもありませんね。しかし、オフの時間に勉強するだけではいけません。ペストリーのシェフは、仕事の中で常に新しい素材や味の組み合わせを探求しています。偶然の産物が成功すれば、それがキッチンの新しい名物になるかもしれません。
失敗から学んで、失敗を 「不幸中の幸い」に変えることができないか考えてみてください。使えないと思っていたものを再利用する技術を学び、さまざまな角度から検証して、水面下に隠された輝きの核を見つけるのです。
また、時には最悪の事態に陥ることもありますが、そのような場合には作業を中断することもできます。ヒントその5を参考に、友人や同僚の意見を聞きながら、どこで線を引くべきかを考えてみてください。
ヒントその9:地域の産業を支援する
料理の世界は、レストランでシェフや料理人が食材を切り刻むだけではありません。野菜や家畜を育てる農家、新鮮な食材を卸売価格で販売する業者、キッチンから生み出される最新の美味しい作品を絶賛する料理評論家やブロガーなど、さまざまな人たちがいます。地域の周辺産業を支援することは、料理学校で料理人志望の学生たちに叩き込まれることですが、デザイナーにとっても重要なことです。
印刷業、製造業、製本業など、身近な産業を調べてみましょう。もし、デザインの一部を外注する必要があるなら、まずは地元で探して、その地域の中小企業の人たちと関係を築くことを考えてみてください。
また、金銭的に余裕のあるデザイナーにとっては冒涜的なことかもしれませんが、クライアントを支援する方法も考えてみてください。もし、幸運にも素晴らしい中小企業や個人から仕事をもらえたら、恐れずにその情報を広めてください。その企業が提供している製品やサービスを試してみて、気に入ったらみんなに知らせてあげてください(もちろん、嫌味のない方法でね)。
昨今の経済状況では、私たちはお互いに助け合って成功していく必要があります。デザイナーにとっては、自分の周りの業界を盛り上げ、育てるためにできるだけのことをすることです。
ヒントその10:最高であれ!
言わずもがなのことですが、敢えて申し上げると、業界を問わず、誰もが毎日、可能な限り最高の仕事をしようと努力するべきです。繰り返しになりますが、小さなことに全力を尽くさなければ、大きなことで成功することはできません。
Millie’s Dog Groomingのウェブサイトで手を抜くのと、多国籍企業や有名人のクライアントのブランディングの仕事で手を抜くのとは、まったく別のことなのです。
怠け癖がついてしまうと、クライアントの規模が大きくなったときに、ペースを維持するのが難しくなります。