「scientist(科学者)」とは、イギリスの哲学者であり科学史家でもあったウィリアム・ヒューウェルが1833年に作った言葉です。この言葉は、一般的には19世紀後半になってから使われるようになりました。
科学者は、関心を持つ分野の知識を深めるために、注意深く観察し、研究を行う専門家です。科学者は社会において非常に重要な役割を果たしており、人々が地球科学、生命科学、物理科学を理解するのに役立っています。
科学者の仕事とは?
科学者は、様々な科学分野の多様性や性質についての理解を深めるために、一連の作業を行います。たとえば、次のようなことです。
1.観察に基づいた帰納的推論による仮説の立案
2.仮説から得られた推論に基づいて、測定に基づく試験や実験を行う
3.実験結果に基づいて仮説を修正・削除する
技術的なプロセスは、科学研究ごとに異なりますが、基本的な原理はだいたい同じです。
2015年現在、アメリカでは、科学の学位取得者約470万人があらゆる分野の雇用形態で働いています。そのうちの59%は企業や産業界、17%は学部機関や大学、6%は非営利団体、5%は連邦政府、3.5%は自営業です。
現在、様々な産業で科学者が活用されており、その産業の成長をさらに促進するためのデータを収集し、検証しています。この記事で紹介するのは、各分野で活躍する様々なタイプの科学者の一部です。科学者の仕事の内容について、知っておきたいことを詳しく説明しています。
13. 農学者
内容:土壌や植物をより生産的にするための持続可能な方法を研究する
平均基本給:年間52,000ドル
農学者は、植物の栽培方法や遺伝子操作を研究します。植物の寿命や耐久性、収穫量を向上させるための実験を日々行っています。その目的は、可能な限り青々とした、病気のない作物を作ることです。
また、農学者は、農家に出向いて、植え付け、収穫、貯蔵、流通に関する問題を共に解決していくことにも多くの時間をかけています。
さらに、土壌を分析して、植物の成長に必要な栄養素が含まれているかどうかを調べます。具体的には、硫黄、マグネシウム、カルシウム、リン、カリウム、窒素、ホウ素、亜鉛などの化合物を含む一般的な主要栄養素を探すのです。
土壌のpH、有機物、土壌の陽イオン交換容量の割合は、地元の研究室で分析されます。その後、農学者はこれらの研究報告を解釈し、植物の成長を最適化するために必要な調整を行います。
12. コンピュータ科学者
内容:コンピュータサイエンスの概念を応用し、効率的なソリューションを生み出す
平均基本給:年間105,000ドル
ハードウェアを主に扱うコンピュータ技術者とは異なり、コンピュータ科学者は通常、コンピュータシステムの理論面を担当します。ソフトウェアとデバイス、エンドユーザーとコンピュータの間の相互作用を検証し、モデルを開発します。
また、データ構造の設計と開発、計算複雑性理論、コンピュータ・グラフィックス、プログラミング言語理論、ソフトウェア工学、情報理論など、特定の分野の研究に重点を置くこともあります。
コンピュータ科学者の多くは、ソフトウェア開発会社に就職し、技術開発に関わる問題解決、アプリケーション開発、新理論の構築などを行っています。
11. 生態学者
蟻塚の牧草地の横断調査を行う生態学者のTony Wileman氏
内容:生物とその環境の相互関係を評価する
平均基本給:年間78,000ドル
生態学者は、生態系を調査し、そこに生息する様々な生物の多さ、多様性、行動を分析する専門家です。たとえば、湿地帯や砂漠、森林などの生態系に生息する生物が、お互いにどのような関係を持ち、どのような環境に置かれているのかを研究します。
上位捕食者の有無がその地域の他の生物にどのような影響を与えるか、あるいは外来生物が在来種に対してどのようなメリットやデメリットを持つかなどを分析します。
生態学者は通常、研究機関、政府機関、自然保護慈善団体、環境保護団体などで勤務しています。多くの時間を野外で過ごし、動物や植物、その他の生物を分類し、データを収集します。
十分なデータを収集した後は、オフィスや研究室で科学的な研究を行います。その結果は、環境政策の改善や、都市計画者、建築家、技術者への専門的なアドバイスに利用されます。
10. 地震学者
内容:地球内部で発生するエネルギー波などの地震活動を研究する
平均基本給:年間60,000ドル
地震学者とは、地球物理学を専門とする地球科学者のことです。地質学的物質における地震波の発生と伝播を研究しています。地質学的物質の範囲は、実験室の小さなサンプルから、中心核から地表までの地球全体に及ぶこともあります。
地震学者は、地震と、それに続く地滑りや津波などの現象を調査します。様々なコンピュータ機器や地震計を使って、地震に関するデータを収集し、解釈します。
地震学者の大半は石油探査に従事しており、爆発やトラックの振動による制御された地震波の生成、追跡、調査を行います。地震波の動きや相互作用から得られるデータは、ガスや石油がどこにあるのかを把握するのに役立ちます。
地震学者の中には、諜報機関に勤務し、地下核実験の爆発を分析する人もいます。また、地質学的構造や地球の構造について理論的な研究を行う人もいます。
9. 海洋生物学者
内容:海洋やその他の塩水環境における生物や生態系の研究
平均基本給:年間55,000ドル
海洋生物学者は、海に生息する生物を観察します。特定の集団の行動や生理を分析し、生息地の状態や人間の活動が生物に与える影響を評価しています。
海洋生物学者は、大きなクジラから小さなプランクトンや微生物、そして時には海面下1万メートル以上の海洋水まで、あらゆるものを研究しています。
海とそこに住む生物は、商業用船舶、化学物質、プラスチック、レクリエーション用ボートなど、人間の活動に伴う問題との共存という課題に直面しています。海洋生物学者は、そういった活動が海洋生物にどのような影響を与えるかを研究し、それらを防止または最小化するための効果的な代替手段を提案することに時間を費やしています。
なかには海洋生物工学を専門とする人もいます。そのような学者は、水生生物の適応性や利点を分析し、それらをどのように産業プロセスに応用できるかを考えます。たとえば、ある海洋生物学者のチームは、細菌やウイルスを撃退するサメの皮膚の構造を模倣したドアノブの素材を開発することができました。
8. 遺伝学者
遺伝学者Irma Andersson氏のシダ植物の温室|画像提供:Wikimedia
内容:遺伝子を研究し、モデル生物で実験を行う
平均基本給:年間80,000ドル
遺伝学者は、遺伝子がどのように継承され、変異し、活性化され、不活性化されるのか、また、特定の病気にどのような役割を果たすのかを理解するために遺伝子を分析します。
遺伝性疾患や先天性奇形を持つ患者の研究、検査、カウンセリングを行う遺伝学者もいます。そのような遺伝学者は、高度なツールや技術を用いて、分子レベルで物事を評価します。これには、DNA分析、タンパク質合成、生物学的プロセスや組織の栄養素の調査などが含まれます。
多くの遺伝学者は、線虫、ショウジョウバエ、げっ歯類、ゼブラフィッシュ、ヒトなどのモデル生物で実験を行い、生物学的形質の遺伝を理解するためにデータを調査します。
環境遺伝学者は、深刻な病気や健康被害を引き起こす遺伝子と環境因子の相互作用を評価することを専門としています。
7. 古生物学者
古生物学者のベルナルド・ゴンサレス・リーガ氏がフィールドで恐竜の骨格を研究している様子|画像提供:Wikimedia
内容:生物の化石とその進化的意義の研究
平均基本給:年間59,000ドル
古生物学者は、地球上の有機生命体の歴史を知ることに興味を持ち、動物、バクテリア、菌類、単細胞生物、植物など、様々な生物の化石を研究しています。
古生物学者の多くは、化石を調査して、生物の年齢や形成方法、周囲の環境との関わり方などを特定します。最古の化石は、34億8000万年前から41億年前のもので、たとえば、動物の外骨格や骨、石の痕跡などです。
特定のツールを使用し、堆積岩の層を見つけて発掘し、化石を見つけて重要なデータを収集する場合があります。次に、発見を評価し、専用のコンピュータプログラムを使用して新しいデータを既存のデータと比較します。
古生物学者は、石油会社や連邦政府機関では化石の識別に、博物館では化石コレクションの準備や管理に、大学では一般的に教官や研究者として採用されています。
6. 天文学者
内容:惑星、星、ブラックホール、パルサー【パルス状の可視光線、電波、X線を発生する天体】などの天体の研究
平均基本給: 年間115,000ドル
天文学者は、何千光年も離れた惑星、小惑星、星、銀河を含む宇宙の研究に従事します。様々な天体がどのように形成され、何百万年もかけてどのように進化してきたのかを解明しようとしています。
天文学者は、地上と宇宙の両方に設置された望遠鏡やその他の機器を使って観測を行い、データを収集します。通常は、宇宙の物体や現象の組成や動きなどの特徴を追跡します。太陽や小惑星、惑星、彗星などの身近な天体を研究する人もいれば、銀河やブラックホール、パルサーなどの遠く離れた複雑な天体の分析を専門とする人もいます。
天文学者の仕事には、科学理論の構築と検証、データを検証するための複雑な計算、データをモデル化するためのコンピュータプログラムの開発または使用、学術雑誌に掲載するための提案書や論文の執筆などが含まれます。
5. 細胞学者
内容:感染症や病気、がんなどによる細胞の異常を検出する
平均基本給:年間73,000ドル
細胞学者は、高度な顕微鏡を使って人間の細胞を検査する研究者です。特に、感染症やがん、前がん病変の存在を示す細胞の異常を調べます。
細胞学者は、身体の様々な部位から細胞の標本を入手し、特殊な方法でスライドに配置します。その後、スライドを分子レベルで検査し、特定の疾患を示す不規則な変化をマークします。このようにして、治療可能な段階で病気を発見するのです。
腫瘍の新しいスクリーニング方法や識別方法が開発されるにつれて、細胞学者は病気の診断と治療において重要な役割を果たし続けることになるでしょう。
4. 地質学者
インド、ラジャスタン州ビルワラ地区で働く地質学者たち
内容:地滑り、火山の噴火、地震などの地球のプロセスを研究する
平均基本給:年間69,000ドル
地質学者の仕事は、地球の歴史を理解することです。地球を構成する固体、液体、気体の物質と、それらを形成する一連の出来事を調べます。
地質学者は、鉱物や金属の調査だけでなく、天然ガス、石油、水、およびそれらを抽出する技術も調べます。また、地滑り、地震、火山噴火、津波など、地球の内部構造の変化にも注目します。地質学者の研究成果は、そのような現象の発生を一般の人々に警告するために使用されています。
なかには、ガスや石油採掘のデータ分析を行う政府機関のためだけに働いている地質学者もいます。彼らは高度なコンピュータソフトウェアを使用して、取得したフィールドデータのデジタルデータベースを生成し、研究のために地質学的プロセスを正確にモデル化します。
昨今、気候変動が大きな問題となっています。新しい発見は、現在の気候がどのように変化しているのか、そしてその結果がどうなるのかを理解するのに役立ちます。
3. 植物学者
内容:植物界とその環境への影響を研究する
平均基本給:年間70,000ドル
植物学者は、光合成などの生理学的プロセスを分子レベルで研究し、作物の耐病性、収穫量、栄養価を向上させるための試験を行う植物の科学者です。
その研究には、植物を修復ツール、医薬品、繊維、またはバイオ燃料として新たに利用する方法を見つけることが含まれます。なかには、光合成の生化学、被子植物の進化、卸売市場向けのバラの栽培など、ある特定の分野を専門としている学者もいます。
現在、植物学者は40万種以上の陸上植物を研究しており、そのうち約36万9,000種が顕花植物、約2万種が蘚苔類(非維管束性の陸上植物)です。
植物学者は、政府には実地調査や作物栽培システムの比較のため、製薬会社には植物由来の新しい医薬品の発見のため、農業界には新しい品種の育成のため、大学には教授や研究者として、雇用されています。
2. 化学者
内容:物質の組成とその特性を研究する
平均基本給:年間81,000ドル
化学者は、物質の特性を原子や分子レベルで調べます。割合や反応速度を分析し、未知の化合物や他の物質との相互作用について理解を深めます。そのために、分光法やクロマトグラフィーなどの高度な分析ツールや技術を活用しています。
一般的に化学者は、生化学、理論化学、核化学、神経化学のいずれかを専門としています。たとえば、核化学では、特に放射能をはじめとする核物質のプロセスや特性を扱います。放射線が様々なものに与える影響を調査し、効果的な治療法や、放射性物質を利用する新しい技術を開発します。
最も人気のある分野は製薬業界で、化学者は様々な薬物の特性を研究し、医薬品の安定性と有効性を決定します。なかには、犯罪捜査の証拠品を検証するために法医学研究所で働く人もいます。
1. 物理学者
原子ビーム装置を調整する物理学者ヴァーン・エーレルス氏|1960年1月撮影
内容:自然界を支配する法則を探る
平均基本給:年間120,000ドル
物理学者は、物質、空間、エネルギー、時間の特性に関する理論を構築し、科学理論を検証するための実験を行います。また、粒子加速器や電子顕微鏡など、複雑な実験を行うための機械を設計、開発します。
物理学者は通常、宇宙規模から素粒子規模まで、あらゆる長さのスケールにまたがる幅広い研究分野で活躍しています。物理学者は、宇宙の仕組みに関する人類の理解を深めるために重要な役割を果たします。
この分野には、一般的に2つのタイプの物理学者がいます。
1.理論物理学者:物理システムの数学的モデルや抽象化を用いて、自然現象の記述や推定を行う
2.実験物理学者:データ収集の技術、詳細な概念化、実験の実現に取り組む
物理学の第3の分野は、直近の10年間に出現しました。それは「計算物理学」です。計算物理学とは、高性能コンピュータを使って、解析的にはできない複雑な計算を行ったり、実験室で行うことが非常に難しい、あるいは不可能に近い実験をシミュレートしたりすることです。
物理学者の多くは、学術機関や研究所、産業界で働いていますが、中には政府機関に雇用され、高度に安全な施設で放射性物質の探索を行う人もいます。
よくある質問
科学者になるために必要なスキルは何ですか?
科学者に求められる具体的なスキルは業界によって異なりますが、成功するために必要な共通の特性はいくつかあります。
好奇心:好奇心を持つことは、学生や研究者が疑問を持つきっかけになります。また、学習意欲が高く、自ら情報を探し出すことができる人であることです。
問題解決能力:厄介な問題を解決することは、しばしば新しい研究や革新的なアイデアの核となります。問題解決能力は、創造的思考、既成概念にとらわれない思考、適応性、分析能力など、多くのスキルと関連しています。
時間の管理:多くの人は何十もの仕事やプロジェクトを同時にこなしていますが、先延ばしにせず、気が散らないようにして、できるだけ長く1つの仕事に集中することが非常に重要です。
意識すること:科学者として成功したいのであれば、自分のプロジェクトが商業的にどのような意味を持つのか、自分の仕事が組織の大きな目標にどのように合致するのかを意識して学ぶ必要があります。
科学の父とは誰ですか?
ガリレオ・ガリレイは、現代科学の父と言われています。彼は卓越した偏見と迫害の中で人類の知識を前進させました。科学的手法、観測天文学、物理学に多大な貢献をしたことで知られています。
科学者の数が一番多い国は?
科学者の数は、国によって大きく異なります。2021年現在、世界で最も多くの質の高い科学を発信しているのはアメリカです。しかし、中国は驚くべき速さでその差を縮めています。
Statista社の報告書によると、2019年に科学者や研究者の数が最も多かったのは韓国でした。この国では、労働者1,000人あたり16人のフルタイムの科学者がいます。2番目はスウェーデンで、労働者1,000人あたり15人の科学者、研究者がいます。
世界で最も裕福な科学者は誰ですか?
ジェームズ・デューイ・ワトソンは、現在、世界で最も裕福な科学者です。この億万長者の遺伝学者は、DNAの分子構造の発見に重要な役割を果たしました。この功績により、1962年にノーベル医学・生理学賞を受賞しています。ワトソンは、『The Double Helix』(1968年)【邦訳:『二重螺旋 完全版』】をはじめとする数多くの科学書を執筆しています。