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日本人よ、時間に縛られるな!!働き方の概念を覆せ

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900社を超える企業が導入しているクラウド人材管理ツールを開発する、株式会社カオナビ。

 

「時間は使わない。アタマを使う」という働き方理念を掲げている同社は、「全社員が」時間内に帰るという意識を徹底し、実際に実現している企業です。目標として掲げてはいても、なかなか実現できない企業が多い中、どのような意識改革や制度の工夫をされているのでしょうか──。

 

働く上で考えるべき大事なこと、仕事と人生の捉え方、経営者へのアドバイスまで、「日本の働き方改革」に根本的なメスを入れる貴重なお話を、代表取締役社長である柳橋仁機さんに伺ってきました。

 

――柳橋 仁機(やなぎはし ひろき)

株式会社カオナビ 代表取締役社長

 

2000年、東京理科大学大学院基礎工学研究科電子応用工学専攻修了。アクセンチュア株式会社にて業務基盤の整備や大規模データベースシステムの開発業務に従事。

2002年より株式会社アイスタイルで事業企画を担当した後、人事部門責任者として人材開発や制度構築、管理体制の整備などに従事。

 

2008年5月に株式会社カオナビを創業し、2012年より顔写真が並ぶクラウド人材管理ツール「カオナビ」の事業を本格的に開始する。現在では、企業規模・業種問わず900社以上に導入される業界シェアトップクラスのサービスにまで成長させている。

 

 

いかに時間を使わず、効率よく成果を出せるか

 

――カオナビさんは、時間内に帰るという意識が全社員に浸透しているそうですね。

 

柳橋 仁機(以下、柳橋):そうですね。3年位前から、全社員には決められた時間内に仕事を終わらせるように言い続けてきました。ちょっと難しい話になってしまうんですけど、私生活を犠牲にしてまで残業して働くというのはとっくに時代遅れになっていて、今はいかに効率良く働いてパッと帰るかに知恵を絞るべきだと思うんですよ。

 

――というのは?

 

柳橋:僕は、社員に対して「残業せずに早く帰りましょう」と、優しいことだけを言っているわけではありません。逆に、「時間を使わずに成果を出すように」と、どちらかと言うと厳しいことを要求しています。どんな仕事でも、だらだらやればやった分だけ、ある程度成果が出ますからね。

 

しっかり定時で帰って、その中で成果を出すためにはどうすればいいのか、段取りの仕方をすごく考えないといけないし、それを要求しているので、むしろ難しいことをみんなに要求しているという認識すらあります。

 

しかし、結果的にそれができるようになったら、その分の余暇が生まれて、それはみんなにとってもハッピーでしょって言い方をしています。単に優しさで残業をしないようにしているだけではなくて、“効率や成果”を求めている。そこがとても大事ですね。

 

――まさに、効率や成果がより求められていく時代ですよね。

 

柳橋:日本はどんどん人口が減ってきている。ということは大きい視点で見ると、日本は労働力に頼っていたら衰退していくのは間違いないんです。効率良く仕事をしなくてはいけない時代が来るのは間違いないので、我々がクラウド人材管理ツール「カオナビ」を作ったのも、その時に必要となるツールになればという想いがあったからです。

 

――どうしても、日本は「どれだけ働いたか」という思考が昔から根強いですよね…。

 

柳橋:先輩より早く帰ったらあの人頑張っていないみたいな噂が立つとか。隣の部門は毎日早く帰っているのに私たちはいつも残業していて、売り上げが上がらないのは隣の部門のせいだとか…よくありますよね。そういう時間争いをしている訳ではないのに、どこか時間に縛られがちです。

 

政府も残業時間を減らそうと掲げていますが、残業時間を減らせばいいという問題じゃない。日本って、全部“時間”で考えちゃっている所があると思います。

 

――世界的にみても、日本人は働きすぎとよく言われますね。

 

柳橋:「一生懸命残業したので誉めてください」とか、「私これだけ働いて頑張りました」とか、時間をもって成果をアピールする国民性が少しあって…。しかし、欧米なんかは、時間をかけるよりもパパっと成果出してサッと帰った方がいいじゃんていう考え方なんです。日本では働く側も働いてもらう側も、労働時間に変に価値を感じてしまっている

 

だから、その価値観を変えたいというのが根本にあるんです。今はそこを変える努力をしています。将来的には、15時に終わって帰っても僕はいいと思っていて。日本は、1日8時間働かなきゃいけないっていうルールが決まっている時点で、結構遅れてる国だなと思います

 

――ではカオナビさんでは、実際みなさん何時ごろに帰られているのですか?

 

柳橋:定時の18時半にピタッと上がる人もいるし、19時半にはほぼ誰もいないですね。誰かに言われるでもなく、全社員が自然とそういう状態になっています。

 

――柳橋さんはいつも何時に帰られるんですか?

 

柳橋:いつも18時半ぴったり。17時くらいになると「早く18時半になれ」とソワソワしていますね(笑)

 

――しかし、ここまで社内で浸透するまでには、時間がかかったのでは?

 

柳橋:社員が増え始めた頃から1年くらいは意識して僕から言っていましたが、ここ2年位は何も言っていないですね。

 

最初は残業時間を計算した集計表をよく見ていたんですね。すると、やっぱり何人か帰りが遅い人がいたので、彼らには直接話をして早く帰るように促したりしていたんですけど、今はもうそういうこともしていません。方針だけは掲げて、個別のチェックは一応してますけど、今は僕が言わなくてもそういう環境になっていますね。

 

――すごいですね!でも、みなさん最初は難しかったのでは?

 

柳橋:いや、僕に怒られる方が怖いんじゃないですか?(笑)だからそれがまず先にあって、定時に帰るためにはこうやって工夫しようっていう思考的な訓練は、各自がそれぞれ頑張ってるんじゃないかな。それが正直なところだと思いますよ(笑)

 

 

仕事は論理性で成果を出すゲーム

 

――時間内に帰るためには、論理的に考えること(ロジカルシンキング)がすごく大事だとお聞きしました。そのために、会社として何かされていることはありますか?

 

柳橋:昨年は、ロジカルシンキングの研修をしました。全社員を対象に2つのグループに分けて、座学とワークショップ形式でやって、その後に希望者を募って講師の方とマンツーマンでロジカルシンキングの研修を4回実施しましたね。

 

実際に自分の業務でどういうことを解決したいのかを、ロジックツリーを作りながら解決法を自分で導き出すやり方です。

 

――とても勉強になりますね。

 

柳橋:8時間でちゃんと帰ることも大事だけど、ビジネスにおいては論理的に考えて行動することが非常に大事で、僕は絶対的に必要だと思っています。それがちゃんと効率良くできないと、仕事がうまくいかない。

 

ただ人生においては、論理性なんてまったく必要ない。人生と仕事を分けた場合、人生は感受性の赴くままに生きればいいと思うけど、仕事は論理的にいわゆるPDCAサイクルを回して、成果を高めていく「論理的なゲーム」だと思っているんです。

 

要するに、僕の中では仕事というのはロジックゲーム。論理性を追求して、成果を高めるゲームをしているだけなんです。

 

――仕事と人生を分けて考えるって、日本人は意外とできていないかもしれません。

 

柳橋:日本人は働くことをどこか神格化している部分があんですよね。仕事はまったくできないダメダメな人でも、人生幸せになれる術はあるし、仕事で大成功した人でも、すごく不幸せな人もいる…。これって全然相関関係はないのに、日本人にはそう考えちゃう人が多い。

 

仕事で成功した人が妙に威張るとか、仕事で失敗した人が妙に落ち込むとかありますけど、それって関係ないじゃんっていう世界観を作りたいんです。

誰にとっても人生の方が大事だから、仕事なんて効率良くやって早くパっと帰った方がいいじゃんと。人生の幸せと、仕事の成功をすごくオーバーラップして考えがちなんですけど、本質的に言うとまったく関係ないと思いますよ。仕事でその人の人生決まらないよねっていう事を、声を大にして僕は言いたい!(笑)

 

――ちなみに時間内で帰ることは、評価制度にも関わってきたりするんですか?

 

柳橋:もちろん。だから残業が多い人は、評価の時にマイナス要因になるよって言っています。効率良く働けていないということですからね。過去に1人くらいいたかな…。でも頑張って働いたんですって主張してきたから、いやいやだからそれが違うんだよ、それを認めていないんだよって、評価面談の時に話をしました。

 

――顧客がいる職種だと思うので、そこはなかなか難しいのでは?

 

柳橋:いや、僕らがこのビジネスを選んでいるのも、自分たちのペースで働けるビジネスモデルを作っているので。僕は経営者として、働き方とビジネスモデルをセットにしないと、働き方も実現できないと思っているんです。ただ例えばライターとか、締め切りの発生する業務内容は難しいと思いますね。なので、そういった分野を基本的にやらないというのは、自分の中で鉄則!

 

お客さんが「今日中にやって」と言ってきたとしても、「お客様に期限を設定する権限はありません」っていうスタンスだし。さすがに直接そこまでは言えませんけどね。

 

あくまでも僕たちはカオナビというサービスを運用しているだけであって、この期限までに何かやらなきゃいけないとか、この期限までに何かやらないとお金が貰えないとか、そういうことは約束しない。もっと言えば、それがいやであればお断りしますっていうスタンスなんです。

 

――すごいですね!(笑)

 

柳橋:でも欧米のサービスってそうなんです。嫌ならやめて下さいっていうスタンスです。それに比べて、お客様は神様だっていう前提から入るのが日本人。

 

絶対にお客さんの期待を裏切っちゃいけないとか、断っちゃいけないとか…ありますよね。でも欧米人は、僕らの提供する商品・サービスがもし気にくわなかったら逆に言って下さいよっていう感覚でやっている。その感覚でやりたいんです。

 

嫌なものは断らないと、自分たちのペースで仕事することは不可能ですよね。だから僕は、ビジネスモデルや働き方も、自分たちのペースで仕事をすることにすごくこだわっています

 

 

「時間」には価値がない

――±20時間制度というのは、具体的にどういった制度ですか?

 

柳橋:所定労働時間より、月に±20時間の幅を設けて、各自で労働時間をコントロールできる制度ですね。会社としては働きやすい環境を作るよ、ただ社員もちゃんと効率良く働く努力をすべきですよっていうのが僕の主張なんですけど、残業を絶対にしちゃいけない制度っていうのは嫌いなんです。

 

例えば18時半になったら電気やPCの電源をバシって落としちゃったりすると、「もう少しで終わるところだったのに」とか、「今日はもう2時間集中してやりたかった」とかあるでしょ。だから結果的に残業はしていいよと。ただし、残業した翌日は早く帰るなど各自で調整して、最終的に1か月のうちに±20時間の中におさめられた人が優秀だということを主張するために、その制度にしています。

 

だから悪く捉えたら、+20時間の分は残業代が出ませんよっていう意味になっちゃうけど、逆に良く捉えたら、-20時間足りなくても基本給まるまるもらえるっていうことになります。実際に社員の中に1日7時間台で、月160時間に満たなくても、給料満額もらっている人がたくさんいますよ。これからそのバーをもっと下げていこうかなと。

 

――それは大きな変革ですね。

 

柳橋:時間に価値がないと思っているから。±20時間におさめられたっていう事は、あなたの段取りに価値があったっていうことを表現したい

 

――その分早く帰って自分の生活を充実させることもできますし、それが仕事にも返ってきますよね。

 

柳橋:まさに。仕事の中でいくら頑張ってもいいアイディアって出でこないけど、休みの時にふと思いつく事ってありますよね。そういうフィードバックってすごく大事だと思っているんですけど、日本人て休み下手というか…。余暇もらってもすることがないとか、フラリーマンなんて典型的ですけど、日本人って休むのが下手なんですよね。働き方を変えても休み方が下手だから、有効に使えない人が多い。

 

――なぜでしょう?(笑)

 

柳橋:小さい頃からそういうのが染みついちゃっているのかな。働くことしかない人生の人は多いと感じますね。遊んだり趣味を持ったり、なぜか豊かな生活が送れない傾向がある。日本人は、その辺りの文化レベルが低いなって感じますね。

 

――なるほど。話は変わるんですが、カオナビさんは副業OKということで、されている方もいらっしゃるんですか?

 

柳橋:仕事から帰った後に何をするかは社員の自由ですから、副業がダメっていう発想はまったくないですね。逆にダメな会社は、どうしてダメなんでしょう?

 

――一つ考えられるのは、本業が怠ってしまうのではないかという危機感でしょうか。。

 

柳橋:それはすごく考え方が古いなって思いますね。社員を時間で拘束するっていう考え方の裏返しかなと。そういう考え方がなければ、土日に何をやっていようがまったく気にならないし、全然自由にやってほしいと思いますね。法律を犯す事とか、本業に迷惑がかかることだけはしなければ、無問題ですね。

 

チャンスを広げられた方がいいし、むしろ副業で他の事をやって、そこで得られた知見を持って帰ってきて欲しいカオナビとは全然関係のない世界の事をやって、実はこっちの世界にはこういうことがあるんだよって逆に教えて欲しいですね。

 

 

「時間内に帰る」を実現できない全国の社長に伝えたいこと

 

――「時間内に帰る」を実践したくても、なかなか実現できない企業へのアドバイスをお願いします。

 

柳橋:これは100%社長の責任。社長が考え方を変える、それに尽きると思います。社員は会社のルールに縛られているので、いくら個人で頑張ってもできないことっていっぱいある。だから僕はメッセージを送るとしたら、社長にメッセージを送りたい。時間で評価しているようでは、マズいですよと言いたいですね。

 

それに働き方っていうのは個人で頑張る部分も多分にあると思うんですけど、やっぱり経営者が重要な責任を負ってるよねってすごく言いたくて。日本人の約半分はサラリーマンで、その組織を束ねる経営者が、社員の働き方に対して一番責任を持たなきゃいけない人。だからカオナビのようなツールを使って環境を整えて下さいっていうのが、僕の働き方に対するアプローチなんです。

 

個人で頑張っても上が残業を求めてきたら、さすがにキツいですよね。だから経営者が意識を変えて、時間で拘束するっていう考え方をまずやめた方がいいよ!って社長に伝えたいですね。

 

 

あとがき

とにかく「働き方」に対して、真摯に追求し続ける姿が印象的だった柳橋さん。その言葉の端々がグサグサと胸に刺さってくると共に、いつの間にやら少なからず労働時間に価値を感じてしまっている自分や、人生と仕事をオーバーラップしがちな自分に、まさに気づかされた今回の取材。“時間で拘束するという考え方をやめること”は、まさに真の働き方改革であり、日本が向かうべき未来だと強く感じました。

 

※本記事は「働き方メディア Fledge」との提携により掲載を許可された記事です。

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