最近のWebデザインのトレンドの一つであるブルタリズムについては当サイトでも何度か取り上げましたが、その異色な雰囲気に戸惑っているデザイナーも多いかと思います。今回は、コンバージョン率の観点からブルタリズムをご紹介したいと思います。
ミニマリズムの極致とも称されるブルタリズムは、コンバージョン率を引き上げることが証明されています。
ページ読み込みスピードがとてつもなく速い
手作り感満載で、制作途中なのではないかと疑いたくなるようなブルタリズムデザインには、飾りや仕掛け(ギミック)がほとんどありません。最近のWebサイトでは、マウスを画像に合わせると画像が強調されるのは当たり前ですし、凝ったサイトでは、画面を下にスクロールしていくと次から次へと画像が飛び出てきたりしますよね。そのようなWebサイトはユーザーの目を引くものの、読み込み速度は少なからず犠牲にしています。
ブルタリズムサイトは、見た目はユーザーフレンドリーなデザインではないものの、余分な要素(ビデオや大容量画像など)がほとんどない分、読み込み速度は一般的なサイトより格段に速くなります。
Kissmetricsでは、読み込み速度がコンバージョン率にどれだけ影響を与えるかが紹介されています。
・サイトのパフォーマンスに満足しなかったユーザーの79%は同じサイトで買い物を行うことはない。
・読み込み速度の1秒の遅れは7%のコンバージョン率の低下をもたらす。
また、Soastaによると、モバイルサイトで1秒速度を上げると、27%のコンバージョン率の上昇が見込めるという研究結果が出ています。
ブルタリズムデザインのサイトはHTMLの基本的な知識とテキストエディターさえあれば作ることができるようなものばかりで、読み込み速度が速く、コンバージョン率の上昇が期待できるのです。
Hacker Newsではブルタリズムサイトが紹介されていますが、このサイト自身もブルタリズムデザインであり、ページの読み込み速度は0.79秒で「とても速い」という診断結果でした(Alexa analytics調べ)。
導線がしっかりしている
UXについての研究を行うNielsen/Normanグループのホームページには「サイトの利便性が損なわれると、ユーザーは離れる。」と明記されています。つまり、ユーザビリティの低下はコンバージョン率の減少に繋がります。
ユーザビリティがコンバージョンに及ぼす影響は大きく、たとえばECサイトでは、ユーザーが求める商品がすぐに表示されて、商品の値段、手数料、送料、配達時間が分かりやすく、購入ボタンが目立つように配置されていれば、ユーザーはそのサイトに好感をもち、アクションを起こしやすくなります。
ブルタリズムデザインでは、要素が少なく導線が分かりやすいので、ユーザーは欲しい情報まですぐに辿りつけます。つまり、直感的に使いやすいと思ってもらえるので、ユーザビリティが高いと言えます。
この夏Appleが開催した「WWDC16」の特設サイトは以下のようなもので、要素が極限まで少なく、導線も分かりやすい作りになっています。今年はデザイナーがイベントに出席するとAppleのエキスパートにWebデザインについて質問ができたそうですが、サイト内で一番目立っている「コンサルタント」というボタンからオンライン予約ができるようになっています。
要素と選択肢が少ない
突然ですが、ジャム店の売り上げについて面白いデータがあります。
24種類のジャムを取り扱う店と6種類のジャムを取り扱う店がありました。24種類の店は60%の客を呼び込み、3%の人がジャムを購入しました。一方、6種類の店は40%の客を呼び込み、30%が購入したそうです。人は心理学的に「選択肢が多いと選べない」傾向にあるそうです。
これはWebサイトでも同じことが言えます。要素を増やして、ユーザーの行動選択肢を増やしてしまうとコンバージョンまでたどり着くのが難しくなってしまうのです。
Crazy Eggは、コンバージョン率を上げるためにLPでは次の三つの要素を削除するように言っています。
・ナビゲーションバー
・大きすぎるフォーム欄
・多すぎるCTA。
ブルタリズムデザインにはユーザーの気を散らす要素がありません。ほとんどのブルタリズムサイトでは、1つ注目ポイントがあるだけで、そのポイントは分かりやすく表示されています。このように余分な要素を減らしてユーザーの選択肢を減らすことで、コンバージョン率の上昇が見込まれるのです。
最後に
ブルタリズムデザインに対しての批判的な意見は「正統的ではない」とか「魅力的ではない」というものばかりですが、コンバージョン率について考えてみるとどうでしょう。Webサイトでは、要素が少なくてシンプルなデザインほどコンバージョン率はあがるという統計結果が出ています。その観点から見ると、究極のミニマリズムとも言えるブルタリズムデザインは魅力的に見えてくるのではないでしょうか。
この記事は「Why brutalism boosts conversions」を翻訳・参考にしています。