インフォグラフィックは、複雑なデータ(数値)や統計情報を「視覚的に」表現できる非常に効果的な表現手法です。
そもそも数字の羅列だけを見てそこにメッセージを読み込むためには、ある程度「数字を読む」訓練が必要ですが、インフォグラフィックは「誰でも・ひと目で」データからメッセージを読み取ることができるため、現在では多くの企業・団体によって活用されています。
さらにこのインフォグラフィックには、そのわかりやすさから強力な「伝播性」をもっており、時にたった1枚のインフォグラフィックが世界を一変してしまうことさえあります。
例えば、この「2015年9月にISIS(イラク・シリア・イスラム国)によって占領されたパルミヤでの被害状況」を示すインフォグラフィックも「世界を変えたインフォグラフィック」の1枚と言えるでしょう。
私たちは主に報道から「ISIS」の非人道的な破壊行為を伝え聞いていましたが、そのISISがパルミヤで行った破壊活動による被害状況(下部)と、パルミヤを奪還するための組まれた有志連合による破壊活動による被害状況(上部)を見比べてみましょう。
ショッキングなことに、ISISによる破壊活動よりもパルミヤを奪還するために行われた有志連合による空爆やロケット掃射、地雷などのほうが、パルミヤの人々や建造物に対して多くの被害を生んでいることがわかります。
ここで注意しなければならないのは、インフォグラフィックは単にデータを表現しているのではなく、周りを一変させてしまうような「燃料」も持っているということです。
この「燃料」が負の方向に働いてしまったインフォグラフィックの例をみましょう。
これは2013年に米国で発表されたインフォグラフィックですが、全性犯罪者のうち、報告された犯罪者(Reported)、裁判にかけられた犯罪者(Faced Trial)、収監された犯罪者(Jailed)の割合を示したものです。
ひと目見て罰則を受けた性犯罪者の割合の少なさにショックを覚えますが、このインフォグラフィックは「データの誤り」が含まれており、信ぴょう性に関して物議をかもす結果となりました。
このようにインフォグラフィックには「わかりやすさ/伝わりやすさ」ゆえ、間違ったメッセージもものすごい勢いで伝播させてしまう側面があります。
「信頼できる」インフォグラフィックの見分けかたは?
最後に優れたインフォグラフィックの例として、ビル・ゲイツが自身のブログにて公表した「マラリアの脅威」を表現したインフォグラフィックを見てみましょう。
(注:人間を最も多く殺している生物は「蚊」であることが表現されています)
こちらのインフォグラフィックはシンプルでクリーンなデザインになっており、またデータのソースも下部に明記されています。
このようにインフォグラフィックは間違った情報も伝播させてしまうという落とし穴があるものの、それでもやはりその有用性は認めるべきです。というのも、インフォグラフィックはデータが示すコアなアイデアを人々に示してくれるものだからです。
つまりインフォグラフィックは「正しく」作られてさえいれば、より効果的な情報伝達を行ってくれます。
そこでインフォグラフィックの信ぴょう性を推しはかる上で、意識するべき以下の4つのポイントをご紹介します。
・誰が作成したのか?営利/非営利団体なのか、あるいはマーケティング会社なのか?
・インフォグラフィックの意図はなにか?告知のためなのか、広告のためなのか?
・データの出典元は信頼できるところか?
・データが視覚化されることで情報がどの程度歪められているか?
一方でインフォグラフィックを作るクリエイターも、こうした影響力の強さを認識した上で、インフォグラフィックの作成に当たらなければなりませんね。
(※本記事は「Can You Change the World with Infographics?」を参考にしたものです)