日本のタイポグラフィの歴史を振り返ると、驚くほどのバリエーションがあります。特に江戸文化における書体の多様性はかなり豊富で、私たちも馴染みのある「勘亭流」だけでなく、相撲の場で使われている「根岸流」、寄席で使われる「橘流」、「篭字」など数々の書体が生み出されていたようです。
そうした江戸文化で生まれた書体の中にこちらの書体も含まれます。
上図のような法被(はっぴ)などでよく目にする「角字」ですね。
「角字」は正方形のグリッドの中で垂直×水平だけで展開される単純化とデフォルメの構造は、江戸の粋と遊び心、そして美意識が投影されており、日本人が生み出したタイプフェースの傑作と言えるかもしれませんね。
そんな「角字」ですが、この江戸時代に誕生した伝統的な書体「角字」をリデザインしていく書体プロジェクト『真四角』(ましかく)が、グラフィックデザイナーおよび映像作家である山口真人氏をプロジェクトリーダーに、スタートしたそうです。
『真四角』は「角字」に秘められた巧みなタイプフェースを受け継ぎ、現代のデザイナーたちが、11×11のグリッド上でリデザインした現代の「角字」です。江戸から受け継いでいるのはデザイン的なフォルムやルールだけではなく、その用途やシーンも含まれるそう。
つまり、江戸の人々が祭りの時に羽織る半纏を染め抜いたように、自分の店先ののれんを彩ったように、現代に蘇った「真四角」もまた、さまざまなアイテムやシーンに個性や愛着を付加する存在として育てていくのが同プロジェクトのコンセプトとなっているようです。
そのため今のところ、通常のフォントのようにWeb上で配布されてPCにインストールという利用シーンではなく、さまざまなモノ・コトとのコラボレーションを通じて『真四角』は利用されていくそう。
また文章を「書く」ことを目的としていないため、『真四角』は漢字のみの制作となるそうですが、この洗練されたデザイン、Webデザインやグラフィックの場でも使いたいですね。
なお『真四角』は9,138字の文字の開発を目指し、現在1,200字ほどまで開発されているそうです。また2016年10月26日〜11月7日に開催される『TOKYO DESIGN WEEK 2016』へのブース出展(出展は10月26日〜31日)ほか、8月29日にはFabCafe Tokyoで「真四角」をつかったオリジナルのファッショングッズを楽しく・粋にFabするワークショップなども開催される予定。
同時に『真四角』の開発を行うデザイナーも募集中とのことなので、『真四角』に一目ぼれしてしまった方は参加されてみてはいかがでしょうか。
■『真四角』公式ホームページ