老舗の入り口を飾る手書き毛筆の木製看板。
文字だけで店の存在感を強調する木製看板は日本ならではの趣があり、ひとつひとつの文字に書家の魂がこもっているからでしょうか、その看板は時間の流れと共に味わいが増していきます。
しかし、時代が変わり、看板を製造する広告業者が扱う書体はゴシックや明朝などのPC書体が主流になりつつあり、手書き文字の時代からマシン出力の時代へと移行しています。
便利になるその一方で、筆で文字を書く機会が激減してしまい、活字はもとより楷書、行書を代表とする毛筆書体を書きこなせる職人がいなくなるのではないか、と危惧した昭和書体は、かつて看板職人であった書家の綱紀栄泉氏の書き綴った毛筆諸本をデジタル化することで本格毛筆フォントを後世に残すことを考えました。
その作業は気の遠くなるようなものでした。
フォント41種類の偉業!綱紀栄泉の世界
そもそも1人の書家が、41種類もの形態の異なる毛筆書体を書き上げた例は聞いたことがありません。
PCフォントとなると第一水準から第二水準まででおおよそ7,000文字が必要で、41書体に書き分けた文字が約29万字。書き直しを含めると2倍近くにものぼるそうです。
齢80歳の書家の綱紀栄泉氏は、現在もあらゆるニーズに対応する書体を目指すべく鋭意制作中とのこと。
伝統を最新技術に「MORISAWA」
昭和書体で販売中である「昭和楷書」「銀龍」「闘龍」「黒龍」「陽炎」の5書体はPCフォントでありながら、まるで直筆文字と見間違うほどのリアルなかすれや筆勢を残しており、A4用紙にプリンターで印刷したものはまるで手書きの文字であるかのようです。
この5書体は「MORISAWA PASSPORT」2016年の新書体として9月リリースされるそうです。
言葉や文字は時代で大きく変わっていきます。テクノロジーを使って今の時代の文字を後世に残すことは非常に大切な取り組みなのかもしれません。
昭和書体ホームページ : http://www.koueisha.ecnet.jp/