古代ローマ神話において、「神々の王」と呼ばれた神、ユピテル(ジュピター)。木星は、このユピテルにちなんで名づけられました。
太陽系の惑星たちの状況に照らし合わせてみれば、この名前が至極妥当であることが分かります。なぜなら、この巨大ガス惑星(ガスジャイアント)は、私たちの住む太陽系でもっとも巨大な惑星だからです。
この惑星の総質量は、太陽のわずか1,000分の1とはいえ、他のすべての惑星の質量を合わせたよりも2倍も大きいのです。
17世紀にガリレオ・ガリレイが、周囲の主な衛星と共に木星を発見して以来、この惑星に関する様々な研究がなされ、それによって太陽系とその中にある他の天体についての現代的な理解が深まりました。
今回は、きっとあなたも興味をそそられる、木星に関する事実をお伝えしましょう。
海王星のプロフィール
最初に観測したのは:紀元前7世紀のバビロニア人たち
質量:1.8982×1027 Kg
密度: 1,326 Kg/m3
表面重力:24.79 m/s2
赤道直径:142,984 Km
公転周期:11.9年
衛星(月):分かっているだけで67個
画像提供: NASA/JPL
化学成分
木星の正確な組成はまだはっきりとは分からないものの、その大気は、特に核部分においては水素とヘリウムを豊富に含んでいます。雲状の大気中には、メタン、エタン、重水素が存在する証拠も見つかっています。また、赤外線や紫外線を用いて撮影したさまざまな画像から、ベンゼンやほかの炭化水素が存在することも示唆されています。
軌道と公転
木星と太陽の距離は平均で7億7,800万km。地球と太陽との距離の5倍以上にもなります。そして、木星は太陽の周りを11.9年で1周します。地球と違って、このガスジャイアントには惑星規模のはっきりとした季節変化というものはありません。赤道傾斜角が3.13度と小さいからです。
また、極地の上層大気が赤道地域の大気よりも回転時間が5分長い「差動回転」という現象があるのも特徴です。
最初に発見したのは古代バビロニア人
現在広く認識されているところによれば、木星を初めて発見したのは紀元前7世紀の古代バビロニア人です。また、紀元前4世紀の中国の天文学の記録にも、木星を観測した記述が数多く残されています。
その後何世紀も経て望遠鏡が登場し、この惑星を初めて詳細に研究し、巨大な衛星の存在まで発見したのが、天文学者ガリレオ・ガリレイでした。
太陽系でもっとも明るい天体のひとつ
地球から見ると、太陽系で特に明るい惑星は、明るさの順に金星、木星、火星です。惑星の中で、金星に次いでアルベド(外部からの入射光エネルギーに対する反射光のエネルギーの比率)が高いのが木星です。
水星、金星、火星、そして2つのガスジャイアントである木星と土星。これら5つの惑星は望遠鏡なしでも見ることができるのをご存じでしょうか?
もっとも昼が短い惑星
木星では、日々の家事をこなすのに十分な時間はありません。そう、太陽系でもっとも大きな惑星であるだけでなく、すべての惑星の中で一番速く自転しているのがこの木星なのです。この惑星は9時間5分につき1回自転をしています。地球と比較すると、その速さは歴然ですね。
謎の大赤斑
1974年に木星探査機パイオニア10号が撮影した画像
木星を特徴づける大赤斑は、記録によれば1664年にロバート・フックが初めて発見したとも、その翌年にジョバンニ・カッシーニが発見したとも言われています。この初期の発見については、今日まで天文学者たちの間で大いに議論されているところです。
1831年には、ハインリッヒ・シュワーベという薬剤師が、判明している中では最古の大赤斑の詳細なスケッチを残しています。
不思議なことにこの大赤斑が消滅したという報告が、何年にもわたって相次いでいます。最初に消滅が記録されたのは、1665年から1708年までのことです。
1870年代頃には再びかなりはっきりと見えるようになりましたが、その後1883年にはまたぼんやりとしてしまいました。大赤斑の最近の画像を見ると、木星探査機パイオニア10号がはじめて木星に最接近して以降、サイズが小さくなってきていることが分かります。
もっとも大きな衛星ガニメデ
ガニメデは、発見されている太陽系の全ての衛星の中でももっとも大きく、水星や冥王星よりもさらに大きい天体です。その大きさゆえに、ガニメデは太陽系の衛星の中では唯一、それ自体が磁場を持っています。
また、オゾンを含む薄い酸素の大気層を持つことも特徴のひとつです。1990年代には、ガニメデに広大な海の層が存在することが科学者たちによって明らかになりました。その海は、2つの氷の層の間に挟まれていました。
木星の環
木星の環は、土星の環よりもはるかにぼんやりとしているため、見つかったのは1979年とごく最近の出来事です。宇宙探査機ボイジャー1号によって発見されました。
存在する環は全部で3つ。1番目の環は幅が約6,400km、厚さが30kmと言われています。この環は、おそらく木星の衛星アドラステアとメティスから放出された塵でできているものと思われます。
ハロ環と呼ばれる2番目の環は、3つの環の中でもっとも厚いのが特徴で、主に暗く小さな粒子でできています。もっとも外側に位置する3番目の環は、さらに2つの環からなっており、主に木星の衛星アマルテアとテーベが放出した微細な塵でできています。
もっとも近い衛星イオ
イオは、ガリレオが発見した4つの衛星の中でもっとも木星の近くに位置しています。また、太陽系の主な天体の中で、もっとも火山活動が活発であることも特徴のひとつです。
イオの特徴的な黄色がかったオレンジ色の外見は、豊富な硫黄分を含む火山噴出物によるもの。木星の強力な重力によってイオの潮位は平均で100mも上昇し、それが活発な火山活動に必要な熱を生み出しています。
これらの巨大な火山は大量の二酸化硫黄を放出し、その二酸化硫黄はイオの周囲にトーラス(ドーナツ状の領域)を形成しています。
イオの周りの強力な磁気圏は二酸化硫黄を酸化イオンと硫黄イオンとに分解します。水素イオンとともに、これらは木星の赤道付近で特殊なシート状のプラズマになります。このプラズマ内の電子が、木星から発せられるもっとも強力な電波の源のひとつになります。
木星のオーロラ
画像提供:NASA、ESA、およびA. Simon (ゴダード・スペース・フライト・センター)
木星では、太陽系でももっとも強力な極域オーロラが時折発生します。地球上でも、アラスカや北欧などの南極地域で曲がりくねったようなオーロラを見ることができますが、そういった地球上でもっとも強力なオーロラと比べても、木星のオーロラはさらに20~30倍もの強さがあります。
この強力なオーロラは、NASAの木星探査機ジュノーとハッブル宇宙望遠鏡との共同研究によって、運よく天文学者が撮影に成功したものです。研究者たちが木星のオーロラを研究して驚いたのは、非常に強力かつ発生可能性が高いにもかかわらず、彼らが想定するほど頻繁には発生していないという点でした。
探査機と木星探査
これまで、木星に接近した探査機はわずかに7機。パイオニア10号と11号、ボイジャー号の両機、NASAのユリシス、カッシーニ、そしてニュー・ホライズンです。また、木星を実際に周回した、もしくは現在周回しているのはガリレオとジュノーの2機のみです。
ジュノーは現在木星探査を行っている唯一の宇宙船で、木星の磁気圏とその組成の研究をミッションとしています。6、7年後には、NASAとESAはさらに2機の探査船を木星付近に打ち上げて、ガニメデ、カリスト、エウロパといった衛星を探査する予定となっています。
強力な電波
木星は、地球でも受信できるほどの強力な電波を発しています。この電波バーストの発生源は2つ。
1つ目は、木星とにもっとも近い最大級の衛星イオと、木星との相互作用によるものです。火山活動の活発なイオが木星の周りを回る際、木星のある領域を通過すると、強力な磁気パルスを生み、それを増幅させるのです。
2つ目の電波の発生源は、木星の下層大気からの一次放射と、磁場内の極めて強力なエネルギー粒子です。それらから生まれた電波は、天文学者たちが木星や衛星について詳しく解明するための最重要資料になります。
圧倒的な磁場の力
画像提供: NASA/JPL
木星の磁場の強さ(赤道地点では4.2ガウスにもなります)は、太陽系内のすべての惑星の中でももっとも強力で、地球の磁場(0.25~0.65ガウス)の17倍近くにもなります。
この強力な磁場のおかげで、数百万キロ先にある太陽から吹いてくる太陽風の向きをそらすことができています。木星の磁場は非常に巨大で、一番端は土星の軌道にまで達しているといいます。
地球の磁場と異なり、木星の磁場は「過電流」、つまりと金属水素の液体コアから発生する電流から生まれています。簡単に言えば、電子や陽子といった形で荷電粒子を捕捉するヴァン・アレン帯を大きくしたものだと考えればよいでしょう。
また、木星の自転の速さも強力な磁場の理由のひとつです。
木星の重力による影響
木星は、太陽系の中で太陽に次いで2番目に大きな天体です。木星の強力な引力が、今日の太陽系の状態にとって重要な役割を果たしていると推測している研究者もいます。ある雑誌によれば、海王星や天王星は木星によって太陽からはるか遠くへ押しやられた可能性があるといいます。
さらに、天文学者たちの考えでは、木星とその隣にある巨大な土星とが、太陽系の誕生初期において太陽の塵を内惑星に向けて大量に飛ばしたのではないかということです。
木星の生命
木星に生命が存在したかどうかちうことはあまり議論されていません。私たちが知る限り、どんな生命も、このガスジャイアントの環境では生き延びられないことが明らかだからです。
しかし、理論上は嫌気性の生物ならば木星の上層大気中で生きられるということが研究者たちによって明らかになっています。そこなら下層大気よりも気圧が低いためです。ただし、そこで生き残るためには乱れた大気流の流れに浮くことができるほど小さい生物でなければなりませんし、飛べなければなりません。