・アメリカ国立科学財団(NSF)が、太陽の表面の最高解像度画像を公開しました。
・ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡によって、前例のない画像が撮影に成功したのです。
・その最高解像度の画像は、18マイルの特徴さえ捉えることができます。
科学は、太陽や惑星、プラズマ状態(太陽のコロナなど)の理解に貢献してきました。しかし、地球上の通信ネットワークや送電網に影響する宇宙気候の基礎となる物理学は、まだ十分に調査が進んでいません。
科学者たちは、太陽の気候パターンを予測できるよう、太陽の詳細画像の撮影に挑戦してきました。そしてついに、アメリカ国立科学財団(NSF)の4mにも及ぶダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡(DKIST)によって、今までにはない解像度の太陽の撮影に成功したのです。
今回撮影された画像は789nmで撮影され、18マイル(30km)の小さな特徴を捉えることができるほどの最高解像度です。
世界最大の太陽望遠鏡
NSFは20年以上にわたって太陽の研究観測に取り組んできました。そして、幅4mの鏡とハレアカラ山頂3000mという好条件を兼ね備えるDKISTが、高解像度の太陽の表面の撮影に成功しました。
13kwの太陽エネルギーに焦点を当てると、激しい熱が発生するため、熱を除去するか、どこかに閉じ込める必要が生じます。DKISTには、この問題に対処するため、11kmを超える配管をもつ特別な冷却システムがあり、望遠鏡のドームは、温度を安定に保つシャッターと薄い冷却プレートで保護されています。
「ヒートストップ」と呼ばれるドーナツ型の液体冷却材料が太陽光を遮断するほかにも、DKISTには、地球の大気によって作成された歪みを補正するための最新の補正光学が利用されており、明るい散乱光を減光することで、より明瞭な分析を可能にしました。
望遠鏡で捉えた画像には、太陽全体を覆う粒状斑が捉えられています。構成している各セルの大きさはウクライナほどにも及び、太陽のコアから表面に伝わる熱の激しい動きを表しています。
明るくなっているセル中央部は、表面で上昇する高温の太陽プラズマで、冷却されて最終的に暗いレーンで表面下に沈んできいきます。これが「対流」と呼ばれる現象です。
磁気嵐の予測が可能に
DKISTは、高度な機器と独自の設計を持ち合わせています。世界最大の太陽望遠鏡が、太陽のより深いところまでの測定を可能にするのです。
太陽の大規模な磁気嵐は、地球上の衛星通信に影響を与え、GPSなどを無効にしてしまうのですが、DKISTは太陽の外側の部分であるコロナの磁場をマッピングできます。太陽の磁場を研究することで、我々の生活にも関連する磁気嵐などの予測にも貢献できるのです。
望遠鏡は、磁気嵐などの宇宙気候を理解するためには不可欠なものです。ソーラー・オービター(Solar Orbiter)やパーカー・ソーラー・プローブ(Parker Solar Probe)などの宇宙望遠鏡とともにさらなる宇宙の神秘を発見する時が来るでしょう。
これら三つの望遠鏡を組み合わせることで、太陽研究のフロンティアが広がり、星と惑星がどのように磁気的に接続されているかについてさらに明らかになるのです。