• 天文学者たちが存在するはずのない星団を発見。
• この星団は地球から94,000光年離れた場所にあり、誕生からわずか1億2,000万年しか経っていないといいます。
• マゼラン雲のおかげで、これらの星たちは非常に不向きな環境にもかかわらず生まれることができたのです。
宇宙に何百億と存在するほかの銀河と同じように、天の川銀河は1,000~4,000億個の星と1,000億個の惑星を擁し、縦に延びる渦巻き状の銀河です。また、天の川銀河の周りには多くの伴銀河(重力で天の川銀河に結合している小さな銀河たち)も存在します。
私たちの住む銀河でもっとも古い星は、この宇宙そのものと同じくらいの年月を経ており、ビッグバンの暗黒時代の直後に形成されたと考えられます。
今日、天の川銀河は高温のガスと古い星からなる巨大な「ハロー」に包まれています。現在の筋書きから考えると、これらのガスは十分に冷却されないため、集合して新しい星を形成することはできないはずでした。
ところが最近、天文学者は存在するはずのないものを見つけたのです。比較的新しい星からなる星団がハローの中を移動していたのでした。これは地球から94,000光年離れた場所にあり、誕生からわずか1億2,000万年しか経っていないといいます。
この星団はどうやって生まれた?
天文学者たちは当時、空を同じ方向へ移動する若い星の集まりを探していました。星の距離、位置、動きをこれまでにない精度で計測することができるESA(欧州中央機関)の衛星ガイアが測定したデータを分析したところ、この新しく見つかった星団はそれほど年月が経っていないため、ほかの場所で形成されたものではないことが分かりました。つまり私たちが観測した場所の近くで生まれたと考えられます。
しかし、このような不向きな環境で、どのようにして星が生まれたのでしょうか?新しい星を誕生させるのに必要な温度の低いガスは、十分に存在していないはずなのです。
天文学者たちによれば、その答えは「マゼラン雲」にあるということです。これは天の川銀河の周りを回る2つのいびつな矮小銀河で、地球上でも南半球から見ることができます。
星団(青い点)が、渦巻き状の円盤の形をした銀河(白い点)の上にある。星団は、マゼラン雲(紫の点)の物質から生まれた可能性がある/J・ハントによるシミュレーション
現在の位置と速度からすると、この星団はマゼラン雲系から発生したガスの流れ、「リーディングアーム」と関連している可能性が高いといいます。速度や金属量、空間パターンの類似性が、星団がこのリーディングアームのガスから生まれたことを示唆しているのです。
リーディングアームと星団が本当に関連するものであるならば、これはハローの内側で起こっていることを明らかにする手がかりになるかもしれません。リーディングアームのガスの流れと星団が、空間的に離れており動きも異なるのは、天の川銀河のガスから発生するラム圧によるものと説明することができます。
さらに、星団の年齢(1億2,000年)とリーディングアームの端からの距離(17,000光年)を考えると、ハロー内のガスは以前推定されていたよりも10倍も高密度である可能性があります。