UX界において、人間とコンピューターの対話という言葉が出来た時に最大の壁が生まれました。もともとこの言葉は良い意味で作られました。
1980年代に生まれたこの言葉は、人間がどのように道具と関わるかということを考えるための新しく便利なコンセプトでした。
当時のお粗末なデザインというのはしばしばシステムの失敗につながりました。
他の言葉と同じように沢山の誤用を経て、この言葉は今では業界で悪いイメージで使われています。人間とコンピューターは別物であり、デザインはそのふたつの間の対話を作りだすものというイメージになってしまいました。
ユーザーのゴールはコンピューターとの対話ではない
初期のコンピューターにおいては、限られた能力においての関係性でしかありませんでした。今日でも表面的にはその通りでしょう。
デザイナーとしての私たちの仕事はこの対話を見えやすくするものです。
しかしそれはあまりに狭い視点で、人間中心のデザインの背後にあるもの、ゴールを達成するということを見失います。
ユーザーのゴールはコンピューターとの対話ではありません。
対話というものに近視眼的にフォーカスしたとき、重要なのは世界との対話だということを見失います。
ただ対話するのではない
テクノロジーが作り出す人間とコンピューターの関係性を考えてみると、
同じシステム内にふたつのモノがあることがわかります。
スポーツのホッケーで考えてみましょう。
写真(wikimedia.から):ホッケースティックを持った人がホッケー選手です。一体となっています。
ホッケー選手はパック(ホッケーの球)をパスしたりを打つのにスティックを使います。物理的にはホッケースティックはただの道具です。
しかし選手にとっては、ホッケースティックは自分自身の延長でもあります。
人間とホッケースティックというふたつの物理的なモノは、機能的にはホッケー選手として一つのモノです。選手はスティックを使うかもしれない。でも選手が考えていることはパックをどうコントロールするかです。
選手について描写する言葉からもそれは分かります。
テレビでホッケーの試合を見るとき、アナウンサーは「選手がパックを打った」といい、「選手がスティックを使ってパックを打った」とは言いません。
新しいテクノロジーを生み出すとき、物理面と自分自身の延長の両方を世界に作り出すべきです。
口座の残高チェックをするためにアプリを使っているのではなく、
アプリであろうとウェブツールであろうと、私たちはお金の管理をしているのです。
間違ったデザインが目標達成を邪魔します。
新しいテクノロジーを生み出すとき、物理面と自分自身の延長の両方を世界に作り出すべきだ
この100年間、私たち自身の体は拡張してきました。意識の面でも同様の進歩が必要です。デザイナーにとって認知心理学が大事なのはそのためです。
人々がどう考え、どう世界を理解するのかを理解して、ユーザーの意識を拡張するためにデザインを作りましょう。
しばしば、最良のインターフェースはインターフェース自体が存在しない事だと言われます。しかしそれは現実的ではありません。
デザインを考えるときには、最良の次に良いもの作るよう努力すべきです。
インターフェースを通して世界を表現したときに初めて、ユーザーはインターフェースの事を考えず、世界のことだけを考えるようになります。
インターフェースによって作り出される対話で、ユーザーは世界と対話します。メンタルバリアーを取り去りましょう。ユーザーのゴールを明確にしましょう。そこにある障壁を理解し、世界を探検できるようにしましょう。
良いデザインが出来れば世界は開かれ、ユーザーは世界と対話を始めます。
AIへの影響
AIなどのスマート・テクノロジーでもこのコンセプトは同じです。
人間とオートメーションは別々のものだと思われているので、デザインのポイントは両者の対話ではありません。それでも、どうやって人間とテクノロジーが共通のゴールに到達するのかを私たちは求めています。
デビッド・ウッズとエリック・ホリゲルは共著の中で共同認知システムとして説明しました。ユーザー単体ではなく、人と機械のシステムについて、それがどれだけ機能するかについて測定します。システムは成功するかしないかのどちらかです。
これはシステムというものは、テクノロジーがどうやって結論や決定を下すのかが我々人間には分からないブラックボックス上で動いているのではないということです。打ち破るのが難しい信頼の障壁と、技術は常に正しいという過度の期待を作り出します。
撮影者:Gina Marie Giardina。人間とスマートテクノロジーがチームメイトのように協力できるようシステムを設計するべきです。
良いチームメイトのために作るようにデザインするべきです。
2人の人がコミュニケーションを取り、どうやって点を取るのか、そして
共通のゴールを達成するために。優れたチームメイトはお互いのことをよく見て、ジャンプし、仲間の危機には手を差し伸べます。
そして誰かがその専門範囲を超えた時には、速やかに引き継ぎます。それはオートメーションでは大事なことです。
優れたチームメイトは常に情報のやり取りをする訳ではありませんが
誰が情報を必要としているかはいつでも理解しています。
技術のシステムについて考えてみてください。
どれだけ上手くあなたとコミュニケーションしますか?
システムのルールから外れそうな時に教えてくれますか?
ユーザーインターフェースは単に人間と機械の間にあるものではありません。
技術は、人間が使わなければならない何か、ではありません。
それらは私たちの一部であり、私たちのチームの一員で、私たちがやろうとしてきたことをより上手く出来るようにしてくれるものです。
そう考えた時に、どうやってデザインするか、何をデザインするかが変わってくるのです。
対話をサポートするためにデザインする。しかし意味ある対話は人と機械の間ではなく、人と世界の間に存在する
デザイナーにインターフェース作りに責任があるという考え方を変えないといけません。それは出来ることの周りに壁を作り、良い解決方法を見つける能力を覆い隠します。
テクノロジーは私たちの能力を世界に広げるのです。私たちは一つになります。
デザインするときはこのように考えるべきです。
たしかに、対話をサポートするためにデザインします。しかし意味ある対話は人と機械の間ではなく、人と世界の間に存在します。
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